2022.03.30
2022年春より「メディア・インテグレーション認定スペシャリスト」による特別な製品Tips記事をお届けします!
今回のライターはDAW・ソフトシンセなどを中心におすすめのアイテムを圧倒的情報量でお届けする「DAW HACK(ダウハック)」さんです。
 
Synthogy Ivory II「StudioGrands」は「Steinway Model B」と「Bsendorfer 225 Grand Piano」という、どちらも世界的に有名なグランドピアノを新たにサンプリングして作られた同シリーズの最新ピアノ音源です。
2つのピアノそれぞれ50GB以上という大容量サンプルを収録。
さらに、シリーズ最大のベロシティレイヤー数を備え、リアルで繊細な表現を可能にしたプロ納得の音源です。
この記事では、プロ御用達のSynthogy Ivory IIシリーズの最新音源「StudioGrands」の特徴をご紹介。
同シリーズの定番ピアノ音源、Ivory II「GrandPianos」との音色の違いや収録ピアノ機種の違い、価格・スペックの比較をしていきます。
 
 
Ivory II Studio Grandsは、Steinwayの工場で選定を行った「Model B」と、グラミー受賞・ノミネート作品にも使われた「Bsendorfer 225 Grand Piano」をFirehouse Recording Studiosで収録したピアノ音源です。
シリーズ最新音源ということもあって、ピアノ本来の音をしっかりと捉えた極上かつ自然なサウンドを再現。
シリーズ最大の24ベロシティレイヤーを備えていることに加え、それぞれのモデルごとに50GB以上、2つトータルで112GBのライブラリが細かなディテールやニュアンスを再現可能にしています。
また、限りなく残響音を抑えたドライな状態でサンプリングされているため、リバーブの調整で様々なジャンルに対応できることも魅力の一つです。
Ivory IIシリーズは膨大なサンプルデータによる繊細で豊かな表現力が魅力。Synthogy社独自のハーモニック・レゾナンス・モデリング技術による打鍵中の弦の共鳴(ストリング・レゾナンス共鳴)を再現するなど、ピアニストからも評価が高いです。さらにVer2.5になってサウンドエンジン周りも強化されているので、よりハイクオリティーなピアノが鳴らせます。
Steinway Model Bは「理想のピアノの一つ」と言われるほど、多くのピアニストから愛されているグランドピアノです。
同社のグランドピアノ「Model D」よりもサイズが小さいのがModel Bの特徴。セミコンサート、レコーディングどちらにも対応できる柔軟性や、独特の力強さを感じるサウンドを備えています。
Ivory II Studio Grandsでは、Steinway & Sons®社の協力によりニューヨーク州アストリアにあるスタインウェイの工場でサンプリングするピアノを直接選定。
スタインウェイのコンサート・テクニシャンによって整備、調整、調律したものがサンプリングされています。
Bösendorfer 225は同社の代表的モデルで、セミコンサート用モデルの定番グランドピアノとして知られています。
最低音を通常の88鍵より長3度低いFまで4鍵拡張されているのが特徴。92鍵盤というサイズで響板面積が広く、中・低音部の響きが豊かで幅広い表現力を備えています。
Ivory II Studio Grandsは「Bösendorfer 225」をパサデナ(カリフォルニア州)にあるFirehouse Recording Studiosでトニー・シェパード氏がエンジニアを担当しサンプリングされています。
Ivory IIシリーズはプリセットを選ぶと、プリセットに対応したエフェクトチェーンが連動して呼び出されます。それぞれ基本的な音作りがされているのでプリセットを選ぶだけで音作りが苦手な人でもイメージに合ったピアノが見つけられます。
Steinway Model Bは、リバーブやエフェクトを組み合わせたプリセットが「20種類」収録されています。
全体的な印象は柔らかくて繊細な音です。ベロシティレイヤーが細かいため、同じMIDIファイルを使って他の音源で鳴らした時と比べて、小さい音はしっかりと小さく、強い音は強く鳴る表現の幅があります。
また、全体的にデットなサウンドで収録されていますが、ルーム感の違うプリセットが多数収録されているので、エディットで細かく調整しなくてもプリセットを変えて対応できます。
全体的に柔らかくて程良いアタック感が印象的です。音数が少ない曲や静かなシネマティックサウンドでも活躍してくれます。固めな音が好きな人は「Rock Model B Grand」あたりを使うのがおすすめです。
Bösendorfer 225にもリバーブやエフェクトを組み合わせたプリセットを20種類収録しています。
音はBösendorfer 225らしい低音の響きの重さが良い感じ。中域から高域にかけてSteinway Model Bと比べて音の輪郭がはっきりしていているので、粒立ちの良いピアノ音源が好きな人にも合いそうです。
プリセットには深めのホールリバーブをかけたシンセピアノのような響きの「New Age Bosendorfer 225」や「Bose’s Crystal Honky Tonk 225」のようなフュージョンジャズ系に合うエレクトリックグランドピアノっぽいエフェクト加工がされているプリセットもあるのでBösendorfer 225の音源だけでも幅広い曲に対応できます。
全体的に重心の低さがあるので、低音をちゃんと響かせたい曲にぴったり。しっかりと存在感を出してくれます。
リバーブをかけると一気に重厚感がアップするので奥行きのあるサウンドを作りたい時におすすめのピアノです。
 
『StudioGrands』に収録されているSteinway Model BとBösendorfer 225のプリセットは合計40種類。
各プリセットの音質がチェックできる試奏動画を収録しました。
という状態で収録したので、「StudioGrands」の「素の音」を確認できます。
Ivory IIシリーズはピアノプリセットを選ぶと、対応したエフェクトチェーンを含んだプリセットが呼び出されるのですが、それとは別に特徴の違うエフェクトプリセットも用意されています。
エフェクトは
を搭載しています。
Ivory IIのエフェクトプリセットはコーラスやイコライザーの個別プリセットがあるのではなく、それぞれのエフェクトを用いたエフェクトチェーン全体(リバーブを含む)が切り替わる仕様です。
エフェクトプリセットはエフェクトセクションから変更可能。プリセットを変えるとエフェクトチェーン全体が切り替わります。また呼び出したエフェクトプリセットでは各エフェクトの調整やオンオフもできます。
例えば、ピアノプリセットやエフェクトプリセットを選択してから、リバーブタイプ(ROOM、STUDIO、JAZZ CLUB、LIVE VENUE、RECITAL HALL、COCERT HALL、CURVED SPECE)を切り替えて空間の広さを調整するといったこともできます。
同じピアノプリセットでもエフェクトプリセットを変えるだけで違うキャラクターに変わるので、自分好みのサウンドを作り上げたいときに便利です。
音作りが苦手な人はエフェクトプリセットを選ぶだけで楽曲に合ったナチュラルな残響音が簡単に設定できちゃいます!
Small Roomsはルームリバーブを用いたプリセットで、ナチュラルなピアノの響きを表現したい時におすすめ。
主にROOM、STUDIO、JAZZ CLUBという3種類のタイプを使ったプリセットが用意されていて、深いリバーブではなくピアノの響きや鳴りを少し強調するようなサウンドに仕上がります。
HallsはLIVE VENUE、RECITAL HALL、COCERT HALL、CURVED SPECEというホールリバーブを使ったプリセットです。少し広めな部屋から大きなホールサイズで鳴っているサウンドに仕上がります。曲作りの時に気持ち良く弾きたい時には、Hallsのプリセットから選ぶのがおすすめです。
エレクトリックグランドピアノのようなモジュレーションの深いコーラスを使ったプリセットと、うっすらと揺らぎのあるコーラスと深めのリバーブがかかったピアノプリセットです。
コーラス成分を調整していくとステレオ感がコントロールできます。
ピアノのキャラクターを変えたい時に便利なイコライジングが施されたプリセットです。リバーブ設定もされているので、キャラクターが気に入ったらそのままリバーブ調整をすれば良い感じに音がまとまります。
Ivory IIシリーズならではのシンセレイヤーを使ったプリセットです。全体的にウェットなサウンドになっているので、アンビエント系やシリアスなインストゥルメンタル、音が少ないアコースティックサウンドで効果的。
シンセレイヤーはリバーブとは違った響きが重ねられるのがメリットです。
シンセレイヤーを重ねるだけで使えるジャンルや曲調、表現の幅が広がりますよ~!
レイヤーするシンセは「Program」ページの「Synth Layer」セクションで変更可能。レイヤーのオンオフやディケイ、リリース、ゲイン調整もできます。
シンセレイヤーはPCMシンセ、PADシンセ、シンセストリングスなど8種類用意されています。
エフェクトプリセットは、細かい設定がわからなくてもプリセットを切り替えるだけで音のキャラクターを簡単に変えられるのでイメージにあった音が見つけるのがとってもラク!
もちろん微調整ができることも上級者に認められている理由かもしれません。
Ivory IIの「StudioGrands」と「GrandPianos」は、どちらも最高峰かつ定番のグランドピアノたちをサンプリングした音源で、細かな表現力の再現を求められるクラシックな曲はもちろん、POPSなど幅広いジャンルに使えます。
ただ、2つとも定番のピアノを収録していることもあり、初めてIvory IIシリーズを購入する人はどちらを買えば良いか迷ってしまうかもしれません。
そこで、シリーズ最新の音源「StudioGrands」と、シリーズの大定番であり王道の音源「GrandPianos」のスペックやサウンド傾向を個人的な主観で比較してみました。
 
StudioGrands | GrandPianos | |
---|---|---|
収録ピアノ数 | 2台 | 3台 |
収録モデル | ・Steinway Model B Grand Piano ・Bösendorfer 225 Grand Piano |
・Steinway D 9′ Concert Grand ・Bosendorfer 290 Imperial Grand ・Yamaha C7 Grand |
データ容量 | 112GB | 77GB |
ベロシティレイヤー | 24段階 | 18段階 |
プリセット数 | 合計40種類 | 合計48種類 |
 
 
Grand Pianosは「コンサートグランドピアノの定番」と言える3つのモデルを収録しています。コンサートグランドピアノとは、コンサートホールでの演奏に適した、長い弦を使用された大きめのサイズのピアノの総称です。
キャラクターが大きく異なるピアノが3種類収録されているので、幅広い楽曲に対応できるのが魅力。
個人的に「Grand Pianos」に収録されているYamaha C7 Grandは、
などにフィットするので重宝します。
定番で聞き馴染みのある音質のピアノ音源なので、Ivory IIシリーズの中でどれを買おうか迷ってしまったときは優先度の高い選択肢にしても良い音源だと思います。
また、「DAW付属のピアノではなんとなく物足りない…」という悩みからステップアップしたい人なら、まずは「Grand Pianos」を選んでおいて間違いありません。
GrandPianosのデモトラックがこちら。
収録ピアノの数はGrandPianosが3台、StudioGrandsには2台収録されています。収録ピアノ数ではGrandPianosの方が多いです。
Ivory IIのGrandPianosは、
という3つのグランドピアノを収録。
対してStudioGrandsは、
の2つです。
GrandPianosとStudioGrandsとは収録されているピアノが違います。
「GrandPianos」には、日本で馴染み深いYamaha C7 Grandが収録されているのもポイントですね。
ピアノは、サイズ(楽器本体の大きさ)が違うことで音の鳴りも違います。
GrandPianosは
StudioGrandsは
というようにGrandPianosはコンサートホールに対応できるサイズのピアノですが、StudioGrandsの収録ピアノはサイズが少し小さく、セミコンサートやスタジオなどで使われるケースも多いです。
定番&王道のグランドピアノの音が欲しい人はGrandPianos、同じピアノメーカーでも違うモデルのピアノ音源のライブラリーを増やしたい人にはStudioGrandsがおすすめです。
ベロシティレイヤーの数がGrandPianosは18段階なのに対して、StudioGrandsの方が24段階と細かく収録されています。
データ容量で見てみると一目瞭然で、GrandPianosのデータ容量は3台で77GBとStudioGrandsよりも少ないです。これはStudioGrandsが2つのピアノのベロシティレイヤーを最大24段階で収録している影響が大きいと考えられます。
ベロシティレイヤーを細かくするということは、その分、収録するサンプル数も多くなるため一つの音源のデータ量が多くなります。
ベロシティレイヤーの数の多さは、演奏時の強弱の表現力の向上に直結します。
ピアノ音楽を含むバーチャルインストゥルメント(主にサンプル音源)は人間が演奏した時の1音の強弱(演奏時のタッチ)をベロシティレイヤーで再現。127のベロシティ値の中で大きく段階分けして収録しています。
ベロシティレイヤーが細かいほど1音の強弱の再現性が高まりますが、サンプル音源の場合、その分必要なデータ量が膨大になるため、一般的なピアノ音源は10〜20段階程度にベロシティレイヤーを分けた状態で収録されています。
そのためベロシティレイヤーの数はピアニストがバーチャルインストゥルメントに触れる場合の重要なポイントになります。
ベロシティレイヤーの段階が多い音源は人間が演奏する音の強弱がリアルに再現できるというわけですね。ピアノ演奏にこだわりたい人はStudioGrandsがおすすめです。
GrandPianosに収録されているプリセットは
合計48種類です。
StudioGrandsに収録されているプリセットは
合計40種類です。
どちらの音源のプリセットもルームからホール系をカバーしていたり、コーラスやシンセレイヤーがされたエフェクティブなものや、ジャズやロックなどの曲を想定したプリセットが収録されているので、この点の優劣は少ないです。
音の傾向は
というように感じました。
GrandPianosは「THEグランドピアノ!」という感じで豊かな響きが魅力。クラシック、バラードやピアノメインのインストゥルメンタルで映える印象です。明るくてきらびやなYamaha C7 Grandが収録されているのもこのピアノ音源が重宝する大きなポイントだと思います。
StudioGrandsはデットな状態で録音されているので、自分でリバーブ調整がしやすく楽曲に合わせて響きをコントロールしやすいです。そのため、速いタッチで演奏するジャンルやピアノメインではない曲以外に使ってもミックスしやすいと感じました。
ピアノの音自体が良質なので、ピアノの響きやイコライジングなどの音作りは「サードパーティのプラグイン」を使ってミックスしたい人はStudioGrandsの方がまとめやすい印象です。
Ivory IIのStudioGrandsとGrandPianosに収録されているピアノのデフォルト的なプリセットで同じピアノフレーズを鳴らしてみました。
絶妙なデッドさを保ちながら心地良いルーム感があるピアノプリセットが多いです。
スタジオサイズのレコーディングで鳴っているようなタイトなピアノサウンドを鳴らしたい人に最適です。
StudioGrandsよりもサイズの大きいモデルが収録されているので音の響きが豊かです。Yamaha C7 Grandのきらびやな音、Steinway Model Dのバランスの良さ、Bosendorfer 290の重厚な音などキャラクターがそれぞれ大きく違うので、GrandPianosの方が対応できる曲の幅が広い印象です。
Synthogy Ivory IIシリーズはプロの作曲家も使っている人が多い定番ピアノ音源の一つ。
中でもIvory II 「StudioGrands」は残響音が少なく自分好みに響きをコントロールできるのでポップスとも相性が良く、一般的なグランドピアノ音源よりも幅広いジャンルで活躍してくれます。
24段階のベロシティレイヤーであることで、より細かい繊細なタッチを表現してくれるのも頼もしいと思いました。
今回、Ivory II 「StudioGrands」と「GrandPianos」と比較しましたが、それぞれのピアノ音源に感じた印象&個人的な意見は、
StudioGrands
GrandPianos
という感想です。
ちなみに、収録ピアノがすべて違うので両方持っていて損は無いです。
個人的にSynthogy Ivory IIシリーズは、ピアノを弾けないDTMerが弾いたり打ち込んだ時でも良い雰囲気で鳴ってくれるのも魅力だと思います。
シンプルに、コードやアルペジオを打ち込んだだけでも良い感じにまとまってくれるので、StudioGrands、GrandPianosはピアノに詳しくない人にも良さが感じられるかなと思います!
ピアニストにはもちろん、ピアノが得意じゃないDTMerさんも大満足のピアノ音源ですよー!
DAW HACK(ダウハック)
作曲家・トラックメーカーとして活動中のプラグインオタク。
DAW・プラグインを中心におすすめのアイテムを紹介するメディア「DAW HACK」を運営しています。
定番プラグインからマニアックなプラグインのレビューや、ヘッドフォン・オーディオインターフェースなど周辺機器もご紹介。
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DAW HACK