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31 3月 14

シンセのミックスは、いつもダンゴになりがち


スタッフHです。

今日は久しぶりの「Waves EMP(Electric Music Production)シリーズ」のTips記事の更新。お題は「ダンゴになりがちなシンセのミックス」です。

これは私の経験ですが、念願かなってお気に入りのシンセ(ハードでも、ソフトでも)を買って、音作りが楽しくていろいろなサウンドを作って曲作り。調子にのって何パートもダビングして、いざミックスの段階になったときに、

  • この音は思い入れが強いから、このままにしよう
  • この音も絶妙にしあがったなぁ…このままにしよう
  • この音は太さがキモなんだ。このままにしよう

…とやって行った結果、それぞれの「何が聞かせどころなのか」が不明確になり、どの音も聞きづらいものになってしまった…。

まぁ私の優柔不断ぷりは社内では有名なので、これは極端な例ではありますが、お気に入りのシンセを複数重ねてレコーディングする時には、カットすべきをカットし、ブーストすべきをブーストする、広げるべきを広げ、狭くすべきところを狭くする処理が必要になります。

今日はそんな「似たようなサウンドをミックスする手法」をご紹介。サウンドサンプルつきでご紹介します。


Ilpo KarKKainen

Electronic Music Producer

Resoundsound


このチュートリアルでは、似たような傾向のシンセ2種をシンプルなプラグインを使ってミックスする手法について解説しよう。

使用するプラグインはこれだ。


スタートポイント

ここに2つのシンセサウンドがある。それぞれElementのプリセットを使用したものだ。まずは何をすべきかをさぐるため、音を聞いてみよう。最初の2つがそれぞれを単独で再生したもの、3つ目は両方一緒に再生したものだ。

シンセA:プロセス前

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シンセB:プロセス前

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シンセA&B:プロセス前

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クールなサウンドだね。…だけど、ミックスの中でこの2つが同時に鳴っていると、明瞭度が下がってしまう。ただ同時に音が鳴っているだけで、ダンゴになってしまっている。

じゃあPAZ Analyzerを使って、何が起きてるのかよく調べてみよう。シンセAが左で、シンセBが右の画像だ。

ご覧の通り、周波数カーブがほとんど同じだね!ステレオイメージも大差がない。これじゃあダンゴになるのも無理はない。

ミックス作業は耳で行うべきだ。目でやるものではないよね。とはいっても、アナライザーは確認や聞こえているサウンドを正確に判断するときにはとても役に立つ。特に、モニタリング環境があまりよくない場合にはね。


プラン作成

プラグインをあれやこれや立ち上げるまえに、一度手を休めて「どういうサウンドに仕上げたいのか」を考えること。2つのシンセがミックスの中でどうあって欲しい?

今回のような場合なら、僕はシンセAをメインベースにして、シンセBはフック的な目立つサウンドに仕上げたい。同時に、それぞれのシンセのキャラクターはあまり変えたくない。なぜならそのままでクールなサウンドなのだから。わずかな変化に抑えたいところだね。

こんな事を考えながらプランを作り、ミックス作業に取りかかるんだ。

今回のプランは…

  • SSL G-EQ:周波数上でサウンドがぶつからないような音作りに使用
  • Center:シンセAをステレオイメージ中でミドル(中心)にフォーカスさせるために使用
  • PS22:シンセBをワイドに広げ、シンセAを包み込むような仕上げにするために使用

シンセAの処理

シンセAに使った最初のプラグインはSSL G-EQ。この画像のような処理を施した。

  1. LMF(ローミッドフリーケンシー)の帯域では800Hz近辺を狭めのQでほんの少しブースト。このエリアにはパンチのある輪郭を強調するおいしいポイントがある。
  2. HMF(ハイミッドフリーケンシー)の帯域では最も広いQセッティングで、2kHzを中心にカット。この帯域はシンセBにとって重要な帯域だからだ。ここをカットすることで、シンセBに居場所を作って上げるんだね。カットはほんのわずかだけど、違いは大きい。後ほどシンセBでこの帯域をわずかにブーストする予定だよ。
  3. HF(ハイフリーケンシー)の帯域では、わずかにブーストを掛けている。これは元々の高域が素晴らしいサウンドだったので、もっと「噛み付く」ようなキャラクターを与えて輪郭を立たせたかったからだ。

次にシンセAに使ったプラグインはCenterだ。

Centerを使って、サイド全体のシグナルを6db下げる。これはステレオイメージ全体をやんわりと中心にフォーカスするようにするためだ。さらに”Low”のつまみを左に振り切っている。これによって、低域成分をすべてセンターに寄せている。

ではSSL G-EQとCenterを使ったものを聞いてみよう。処理前のものをリファレンスとして並べてある。

シンセA:プロセス前

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シンセA:プロセス後

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そんなに違いはないよね?ここでは大きな変化は必要ないんだ。元のサウンドキャラクターを生かすと同時に、イメージするサウンドに仕上げることはできる。シンセBにいってみよう。


シンセBの処理

最初は同じくSSL G-EQを使っている。セッティングはこうだ。

  1. シンセBはベースというよりも、フックとして使用しようと最初にプランを立てた。なのでまずはハイパスフィルターを115Hz付近まで上げて、過剰なローエンドを取り除く。シンセAで作った最高のローエンドに低域をまかせ、何にも邪魔されたくないんだ。
  2. HMF(ハイミッドフリーケンシー)で、Qを最も広く、2kHz付近を3dbくらいブーストする。ひとつにはこれでフックとして望むクオリティをひきだしたことと、ひとつには同じ帯域をシンセAでカットしたこと。2kHzをシンセAでわずかにカットし、シンセBでわずかにブーストしたことで、それぞれのキャラクターを大きく殺すことなく、フックとなるシンセBを際立たせることができた。

これがEQ処理だ。シンセBに使った次のプラグインは、PS22だ。

PS22はモノラルのソースを疑似ステレオに変えるプラグイン、または今回のように、ステレオソースを際立たせる用途でも使うことができる。

今回は”Mono ReMaster – Pop”というプリセットを使うことにした。理由は単純で、今回のケースにぴったりのサウンドが得られたからだ。広がりのあるステレオ効果と、中域にスペースを確保(シンセAがあるところだ)することができた。このエフェクトの良いところは、モノラルで再生されても互換が保てるところだ。

SSL G-EQとPS22を使ったものを聞いてみよう。処理前のものをリファレンスとして並べてある。

シンセB:処理前

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シンセB:処理後

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結果

ではシンセA、シンセBを一緒に聞いてみよう。トーンとステレオイメージのわずかな違いを聞いてほしい。ステレオイメージの違いが分かりにくいようだったら、ヘッドフォンを使ってみて。

シンセA&B:処理前

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シンセA&B:処理後

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シンセA&B:交互に

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一連の作業で、ボリュームやゲインには一切触れていない事に注目。EQとステレオイメージの操作だけでこれほどの違いがあるんだ。

シンセAはベースラインとしての役割に加え、安定した中域がある。

シンセBはヌケがよくなり、高揚感のあるサウンドに仕上がりつつ、ローエンドを邪魔していない。

完成だ!

このチュートリアルで主に説明したかったことは、ミックスの中でスペースを作ったり音の分離をよくするために、常に過激な処理は必要ないという事だ。しっかりとしたプラン、全てがぴったりと収まるまで、あちこちの変更に時間がかかるのさ。


31 10月 13

ベースラインの魔法使い


スタッフHです。

本日は新しい企画、Waves Electronic Music Productionと銘打った連載記事のご紹介。この企画では、毎回目的を絞ったサウンドメイキングやミックスに関するちょっとしたテクニックをご紹介していきます。世界で活躍する音の奇才たちによるTips集です。

初回となる本ポストでは、「うーん、まぁまぁ悪くないんだけど、いまひとつ」というシンセベースを、より色濃く、主張の強いベースサウンドに仕上げるステップをご紹介しています。


Ilpo KarKKainen

Electronic Music Producer

Resoundsound


本記事はResoundsoundのIlpo Kärkkäinen氏による「シンセベースを帯域ごとにわけ、各帯域を個別に処理してベースライン魔法をかける方法」を解説している。ここでは数種類のプラグイン、C4 Multiband Compressor, Kramer Master Tape, S1 Stereo Imager, Renaissance Bass, Manny Marroquin Distortion, Renaissance EQ and OneKnob Driverなどを使用している。


ベースラインの処理についてよく質問をうけることがある。もちろんいくつもの手法があるけど、今回は冴えないベースラインを最強のベースサウンドに変化させる代表的な手法について解説しよう。これが今回のベースラインネタだ。

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格好いいサウンドと音色だけど、このままだと僕はちょっと物足りない。ちょっと冴えないけど、悪いというわけでもない。もっとアグレッシブな音にしたいんだ。

ここではまず、サウンドの特徴を正しく確認と把握をする。それから強烈な音に仕上げていくんだ。なので、このサウンドを低域・中域・高域の3バンドに分けて、各周波数帯を個別に処理する。

大まかな流れは以下のような感じだ。

  1. ベースラインを帯域別に切り分ける
  2. 低域に使用したエフェクトプラグインをチェック
  3. 中域に使用したエフェクトプラグインをチェック
  4. 高域に使用したエフェクトプラグインをチェック
  5. 最後の仕上げ

  • 帯域別に切り離す

まずはDAW上で低域・中域・高域の3つのトラックを作る。このそれぞれのトラックに、同じオーディオファイルを並べる。

それぞれのオーディオトラックの先頭にWavesのC4をインサートする。C4のソロボタンを使って、それぞれのトラックを低域・中域・高域のみ抽出するんだ。

これが低域のトラックのセッティング。

ご覧の通り、低域以外の帯域は出てこないようになっている。レンジのパラメータは9.0にセッティンッグしてあって、これは小さい音のときにはわずかにコンプで叩く程度、大きな音が入ってきたときには強めにコンプがかかるようになっている。これによって、最初から最後まで均等な超低域をつくることができるんだ。

この処理は低域だけでなく、中域のトラックにも同じ処理をしている。高域の全てをカバーするため、高域トラックで使うC4は高域と超高域の2バンド(4kHzより上全て)をソロにしている。

これにより、それぞれの帯域はこういうサウンドになる。上から順にロー、ミドル、ハイだ。

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さあ、ベーストラックを3つの帯域に分けたことで、ここからはそれぞれの帯域処理に忙しくなるよ!ここからはそれぞれの帯域に使ったエフェクトを見ていこう。


  • 低域に使用したエフェクト

これが低域に使用したプラグインだ。

超低域はわずかに歪ませて少し主張する感じがほしい。Kramer Tapeはそんな要望に完璧に応えてくれる。超低域を破綻させることなくパワーを与えてくれるのさ。これが僕が使ったセッティング。

基本的には、わずかに歪ませる程度に使っているだけで、テープノイズやワウフラッター、ディレイは加えていない。ご覧の通りVUメーターが振り切るほどアウトプットレベルが高くなっている。今回のケースでは、僕が求める結果(サウンド)になってくれたから良かったけど、もし出音に自信が持てなければ、歪みは控えめにしたほうがいいという事を覚えておいて欲しい。

次のプラグインスロットにはS1を使っている。Widthスライダーをゼロにすることで、超低域をモノラルに変えているんだ。僕の作品はアナログレコード盤でリリースされることが多いので、低域にステレオ成分がないほうがいい、というシンプルな理由さ。

最後に、Renaissance Bassを使用している。これは超低域をほんの少し加えるためだ。家庭用のコンポとかオーディオでは聞こえない部分かもしれないけど、クラブとかで再生するときに大きな違いが出てくる。ほんのちょっとの違いが大きな差を生むのさ。下のスクリーンショットのように、オーバーロードしないように気をつけて。

ここまでの処理で、低域はこんな風に仕上がった。

超低域はわずかに歪ませて少し主張する感じがほしい。Kramer Tapeはそんな要望に完璧に応えてくれる。超低域を破綻させることなくパワーを与えてくれるのさ。これが僕が使ったセッティング。

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激しく、かつ最高のボトム。そしてセンターに定位したサウンド。最高だね。


  • 中域に使用したエフェクト

中域はもっとプラグインを使っている。プラグインはこんな感じ。

中域にはさらにエッジ感が必要だ。元のサウンドも悪くないんだけど、もっともっとエッジ感を引き出してあげたい。

ということで、まずはManny Marroquin Distortionを使う。このプラグインはとてもアグレッシブで、歪ませたサウンドを原音に少しだけ混ぜてあげることで、ほんの少しの主張と、特別な倍音を産み出すことができる。


次のプラグインスロットにはRenaissance EQをつかい、中域の中でもオイシイところを2つくらい見つける。繊細なストリングスの処理をしているわけじゃないから、オイシイところを見つけるのに思い切って大胆になっていいんだ。

この時点で僕が求めていたベーシックなサウンドはできあがった。でももう一癖ほしいところだ。ここで変化球的にMetaFlangerを25%:75%(原音:エフェクト音)の割合で使う。ここでは僕のお気に入りプリセットの”Mutron Biphase”を使った。簡単にSFチックなサウンドに仕上がるよ。試してみて。

中域はぐっと前にでてこなくちゃいけない。なのでここでL2 UltraMaximizerを使って、10dbくらいのリダクションがかかるくらいパンパンにつぶす。大丈夫、僕を信じて。

最後に、リバーブを使う。僕はRenaissance Reverbの”Studio B”プリセットを使った。どんなリバーブタイプを使うか、そしてどれくらいリバーブサウンドを付加するかはそのセッションによって様々だ。曲に合わせて調節しよう。僕はこうして中域だけにリバーブを掛けるのが好きなんだけど、こうする事で高域や低域でリバーブサウンドが暴れることなく、いい広がり感が得られるんだ。ナイスで、かつ控えめに仕上がる。

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  • 高域に使用したエフェクト

これが高域に使用したエフェクト。

最初に使ったC4の後にOneKnob Driver、そしてAphex Vintage Aural Exciter。極めてシンプルだけど、これが大きな違いを生むのさ!

OneKnob Driverのツマミをぐっと上げてゲインアップ。ここで欲しかったのは、安定した高域と明瞭感だ。この小さなプラグインは、まさにその欲しい部分を出してくれる。


それからAphex Vintage Aural Exciterを「香り付け」に使った。こいつは単純明快なプラグインなので、ここでは説明しない。

できた!これが高域の音だよ。

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  • 最後の仕上げ

さあ、低域・中域・高域のそれぞれのレイヤーが完成した。ここで大事なのは、それぞれのボリュームバランスに気をつけてベストなバランスを探すこと。参考になるようなCDとかを持ってきて、A/B比較とかをするのもいい。ブレないように。

最後の仕上げで、3バンドに分けていたそれぞれのサウンドを1つのバスにまとめ、L2 Ultramaximizerを使って4dbくらいのリダクションがかかるように設定する。この処理でサウンドにまとまり感がでて、さらに「最後の一押し」を得られる。

これが仕上がったサウンドだ。

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ひとつのサウンドを複数の帯域に分けて処理をするというのは、なかなかパワフルなテクニックだ。それぞれの帯域をどう音作りするか、各帯域をどうバランス取るかによって、無限のサウンドを作る事ができる。このテクニックは、ベース以外にも使えるテクニックなので、色々ためしてみてね。


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