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23 1月 15

NAMM2015:Spectrasonics Omnisphere 2発表!


スタッフHです。

今年もNAMM SHOWの季節がやって参りました。今年現地にむかったのは、サポート部の癒しの新人、マツ(新婚)です。初日からかなり慌ただしいスケジュールのようで、各ブランドとのミーティング内容もまだまだこれから大量に情報が集まりそうな雰囲気。

そんなNAMM2015。さっそく「超・大型」の発表がありました。

発売から数ヶ月でもう話題にもならなくなるような製品も多いソフトウェア音源カテゴリにおいて、決して流行り廃りに流されないバーチャル・インストゥルメントのトップブランド、Spectrasonics。消費されるだけの音源を連発するのではなく、たった3つの音源に集中。さらにサウンドデザイン、サウンドクオリティーの面でも世界中から絶賛され続けている、紛れもないトップブランド。

そんなSpectrasonicsが、突如として発表したのがOmnisphere「2」 。同社のフラッグシップシンセサイザーであるOmnisphere、2008年の発売以来初のメジャー・アップデートをリリースしました。さっそくNAMM会場のSpectrasonicsブース(ILIOブース内)では、突然のニュースに多くの人が駆けつけているようです。

写真はエリック・パーシングSpectrasonics代表のFacebookページより


さて、そんなOmnisphere 2。どんなところがアップデートされたのでしょう。以下のビデオは、Spectrasonics代表のエリック・パーシングさんによるOmnisphere 2イントロダクションビデオ・日本語字幕版です。

ビデオの最後、エリックさんが非常に印象的なコメントをされています。ここに抜粋することにしましょう。

「最初のOmnisphereを発表したとき、”使い尽くすには一生かかるでしょう” と言ったのですが、それは冗談ではなく、本気なのです」

では、新しいOmnisphere 2の特徴をピックアップして参りましょう。


新しく強力なシンセシスの可能性

  • オーディオインポート機能の搭載:お手持ちのオーディオファイルをOmnisphereのサウンドソースとして使用可能
  • 400種以上のDSPオシレーター波形を追加:前作の100倍以上!
  • ウェーブテーブルシンセシス:各波形はウェーブテーブルとしてモーフィングさせることが可能
  • パワフルで新しいグラニュラーシンセシス・アルゴリズムを搭載
  • よりディープなFM/リングモジュレーションにより、アグレッシブなサウンドメイクが可能
  • 新しいフィルターを8種追加:Power Filter、Vowel Filter、Resonantor Filter
  • アナログシンセ特有の「揺れ」を再現するユニゾンモードを搭載
  • モジュレーション機能の強化:より多くのソースで、より多くのターゲットをモジュレート可能に
  • ポリフォニックLFO、モジュレーションエンベロープ機能の追加
  • サウンドソースをリバース可能に

10,000を超えるサウンド

  • Spectrasonicsチームによる、新たに3,000パッチと大量のサウンドソースの追加
  • 最先端で先進的なEDMライブラリを追加
  • ディエゴ・ストッコが製作したカスタム・ビルド・インストゥルメントを収録
  • グラニュラー・シンセシス用にフレーズベースのサウンドソース・カテゴリを追加
  • 数百種類にもおよぶサーキット・ベンド(ゲーム機やオモチャの楽器など)のサウンドを追加
  • Spectrasonicsならではのサイコ・アコースティック・サンプルを大量に追加
  • 鍾乳洞で収録された他にはないメロディックなサウンドソースを新たに追加
  • さらにもっと!

新しいインターフェイス

  • 新しくデザインされた横長のインターフェイス、多くの改良
  • モジュレーションのパラメータ、状態やルーティングを常にウインドウに表示させる事が可能に
  • 常に表示可能なミニ・ブラウザ
  • より大きなフル・ブラウザ

改良されたサウンド・ブラウジング

  • Sound Match機能により「似ているサウンド」を膨大なパッチから絞り込むことが可能に
  • Sound Lock機能により、特定のパラメータ、エフェクトなどの状態を固定したまま別のサウンドをロード可能に
  • コラボレーション、サードパーティーライブラリ制作に最適なサウンド/プロジェクト共有機能
  • サウンド・オーガナイズシステムの改良
  • ロード前に、より快適な試聴が可能なエンジンの改良
  • 「気分」でサウンドセレクト
  • ジャンルの拡大
  • オシレーターのタイプでブラウジング
  • ブーリアン検索機能

アルペジエイターに搭載された新機能

  • ステップシーケンサーのように音階指定が可能に
  • アルペジエイターパターンをロックして、他のパッチに切り替え可能
  • Speed Offset機能により、スローダウン/スピードアップのような演出
  • アルペジエイターをモジュレーションで制御可能に

その他

  • 25種のラックエフェクトを追加
  • エフェクト部に大幅な改良
  • 更に多くの改良

リリースは4月末と発表されましたが、国内でのリリースはまだ未定(とはいえ、同時にリリースできるように調整中)。非常に多くの機能追加だけでなく、きっちり「改良」が加えられたOmnisphre 2。続報をお待ちください。

2015.1.25追記!

Spectrasonicsの代表であり、世界中のアーティスト、クリエイター、サウンドデザイナーからも尊敬を集めるエリック・パーシングさんより、日本のみなさまへメッセージビデオを追加しました。


05 11月 14

リズム隊のミックスTips! – Vol 1イントロダクション


スタッフHです。

本日はMixがうまくなるTipsのMIオリジナル企画。当社ウェブサイトでもたくさんのレビューをしてくださっているオフィスオーガスタの佐藤洋介さんに学ぶ、リズム隊(ドラム・ベース・リズムギター)のミックスTipsムービー連動記事です。


話はさかのぼること数ヶ月前。オフィスオーガスタ佐藤洋介さんが新しいスタジオを作られたとのお話をきき、さっそくお邪魔させて頂いたのです(このスタジオは本当に素敵なスタジオで、ミュージシャンなら誰しもがたまらない空間だったので、改めてご紹介できる機会があれば、と思います)。

佐藤さんの作業場にお邪魔するたびに、私は(図々しくも)いくつもの質問をしてしまいます。あの音はどうやって作ったのか、リバーブには各トラックからどれくらいのセンド量なのか、EQはどこをカットして、コンプは原音と比較させて頂いたり。時には「耳の使い方」まで聞いてしまうこともあります

この日も、この冬に私がセミナー・デモツアーで回るためのセッションファイルについて、色々と佐藤さんからTipsを聞き出そうとしていたのです。

お話を聞いているうちに「この授業は、私だけが聞くのはもったいない。ビデオ撮影をさせていただき、当ブログをご覧頂くみなさまにもお見せしたい」と思い立ち、今回の企画に至りました。

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05 9月 14

物理モデリングピアノでジャズトリオ。全てソフト音源で。


スタッフHです。

夏も(カレンダー上では)終わり、そろそろ秋。各地で「音楽の秋」にまつわるイベントが開始し始めますね。夏はロックイベントが多く、秋はジャズのイベントが多いように思います。

ジャズなら、トリオ編成のものがもっとも好きです。組み合わせはどうであれ、ドラムとベースに+1のもの。とても3人で出しているとは思えないようなアレンジやプレイがあるほどたまりません。無駄なものが一切ない、私のお腹の出っ張りとは対照的な「無い物ねだり」なのかもしれません。

さてさて、そんな話はさておき、今日はピアニストの道脇直樹氏(このブログでは、講師役ミッチーとして常連)に、私の私利私欲をぶつけたデモをお願いしたのです。お願いした内容はこんな感じ。

  1. すべてソフト音源だけで、ジャズトリオのデモを作成してほしい
  2. ドラムとベースだけはあらかじめプログラミングしておいて、そこにピアノをリアルタイム演奏する感じ
  3. ドラムにはFXPansion BFD3、ベースにはSpectrasonics Trilianを使用してほしい
  4. ピアノがリアルタイム演奏である感じが欲しいので、ピアノロールを表示しながらビデオ撮影してほしい
  5. 使ってもらうピアノ音源は、先日V5がリリースされたばかりのPianoteq 5。
  6. 中でも、最もベーシックとなるプリセットD4だけをチョイスして作成してほしい

と、ざっとこんな感じです。

それから数日。ミッチー氏からセッションファイルと鍵盤プレイのムービーが届きました。元のセッションファイルのベースは全てTrilianのウッドベースだけで作成されていたので、これを少々イタズラ。Moogのディープなベースにしてみたり、フレットレスベースにしてみたり。ドラムもそれに併せて、キットを多少入れ替えてみました。ピアノだけは、ミッチー氏のニュアンスをそのまま生かすため、手をつけていません。

パターンは全部で10個。全て、Pianoteq 5の「D4」ピアノを使用しています。

プレイリストをそのまま貼付けましたので、「10分のミニ・ピアノBGM」として使用して頂いてもいいかもしれません。

同じピアノを使用しているにも関わらず、さまざまな表情を見せるのはフィジカル・モデリングの賜物。さらに、距離感の違いは、V5から新たに搭載されたマイク・セレクションの効果でしょう。

Pianoteq 5で新たに追加されたマイクセレクション。15本のマイクを、最大5本まで使用してピアノの好きな場所にセッティングができ、サウンドの幅がさらに広がった。


あるテイクは無指向のマイクを使って、まるでピアノ・バーにいるかのような距離感に。あるテイクは単一指向のマイクを弦に思い切り近づけて、輪郭のはっきりしたピアノに。近接効果などもリアルに再現されるため、ピアノレコーディングをした事がある人ほど楽しんで頂けるでしょう。

さて次回は、同じPianoteqでも別のピアノモデル、K2のプリセットだけを使用した同じ企画をお届けしたいと思います。

Modartt Pianoteq 5製品詳細ページ>


05 9月 14

物理モデリングピアノでジャズトリオ。全てソフト音源で。


スタッフHです。

夏も(カレンダー上では)終わり、そろそろ秋。各地で「音楽の秋」にまつわるイベントが開始し始めますね。夏はロックイベントが多く、秋はジャズのイベントが多いように思います。

ジャズなら、トリオ編成のものがもっとも好きです。組み合わせはどうであれ、ドラムとベースに+1のもの。とても3人で出しているとは思えないようなアレンジやプレイがあるほどたまりません。無駄なものが一切ない、私のお腹の出っ張りとは対照的な「無い物ねだり」なのかもしれません。

さてさて、そんな話はさておき、今日はピアニストの道脇直樹氏(このブログでは、講師役ミッチーとして常連)に、私の私利私欲をぶつけたデモをお願いしたのです。お願いした内容はこんな感じ。

  1. すべてソフト音源だけで、ジャズトリオのデモを作成してほしい
  2. ドラムとベースだけはあらかじめプログラミングしておいて、そこにピアノをリアルタイム演奏する感じ
  3. ドラムにはFXPansion BFD3、ベースにはSpectrasonics Trilianを使用してほしい
  4. ピアノがリアルタイム演奏である感じが欲しいので、ピアノロールを表示しながらビデオ撮影してほしい
  5. 使ってもらうピアノ音源は、先日V5がリリースされたばかりのPianoteq 5。
  6. 中でも、最もベーシックとなるプリセットD4だけをチョイスして作成してほしい

と、ざっとこんな感じです。

それから数日。ミッチー氏からセッションファイルと鍵盤プレイのムービーが届きました。元のセッションファイルのベースは全てTrilianのウッドベースだけで作成されていたので、これを少々イタズラ。Moogのディープなベースにしてみたり、フレットレスベースにしてみたり。ドラムもそれに併せて、キットを多少入れ替えてみました。ピアノだけは、ミッチー氏のニュアンスをそのまま生かすため、手をつけていません。

パターンは全部で10個。全て、Pianoteq 5の「D4」ピアノを使用しています。

プレイリストをそのまま貼付けましたので、「10分のミニ・ピアノBGM」として使用して頂いてもいいかもしれません。

同じピアノを使用しているにも関わらず、さまざまな表情を見せるのはフィジカル・モデリングの賜物。さらに、距離感の違いは、V5から新たに搭載されたマイク・セレクションの効果でしょう。

Pianoteq 5で新たに追加されたマイクセレクション。15本のマイクを、最大5本まで使用してピアノの好きな場所にセッティングができ、サウンドの幅がさらに広がった。


あるテイクは無指向のマイクを使って、まるでピアノ・バーにいるかのような距離感に。あるテイクは単一指向のマイクを弦に思い切り近づけて、輪郭のはっきりしたピアノに。近接効果などもリアルに再現されるため、ピアノレコーディングをした事がある人ほど楽しんで頂けるでしょう。

さて次回は、同じPianoteqでも別のピアノモデル、K2のプリセットだけを使用した同じ企画をお届けしたいと思います。

Modartt Pianoteq 5製品詳細ページ>


31 1月 14

大容量ドラム音源の欠点解消?!完璧なハイハットコントロール


スタッフHです。

本日は、大容量ドラム音源につきまとう「ある問題」を、BFD3で解消する記事をひとつ。各所にビデオを挟んでいますが、全て数十秒〜1分程度となっていますので、読み進めながらビデオを見てくださいね。


古今東西あらゆる大容量系ドラム音源において、もっともサンプル量(=容量)が多いものといえば、ハイハットです。ご存知の通りハイハットは、ドラムキットの中でももっとも表現量があるパーツ。2枚のシンバルを重ねているだけなのに、その開き具合や、スティックの打点位置、強さの全てが相まって。実に多用な表情があるからです。

リズムの要でもあるハイハット。素晴らしいドラマーの演奏を見ると、やはりハイハットの表現が最も違います。ハイハットは、ただリズムを刻むだけのパーツではありません。

近年の大容量系ドラム音源も、この表現力の固まりであるハイハットに力を注いでいます。リリースされたばかりの究極のドラム音源、BFD3ではこのような感じです。

BFD3 様々なハイハット表現(57秒)

スティックの先端で叩くことをTip、スティックのショルダーで叩くことをShankと表記していますが、その違いだけでなく、ハイハットの開き具合を5段階としています。つまり、この時点で2×5の10バリエーション。

さらに、この10バリエーションそれぞれに精密なベロシティレイヤーが最大で80レイヤーまで組まれていますので、ここまでで既に800バリエーション。スティックを使わないペダルの動作や、ハイハットのてっぺん部分(ベル)を叩くなどの奏法を加えると…

…とんでもない表現がBFD3だけで可能であることがお分かり頂けるかと思います。きっと、ライバル音源となる他社のものも、ハイハットには相当な労力と、容量を掛けている事でしょう。


ところでこのハイハット、これだけのバリエーションがあると、実際の鍵盤(ドラムパッド)にはどう並ぶのでしょう。私のような古いGM世代には、ハイハットといえば鍵盤3つだろ!(それでも当初は驚いたものです)と思うのですが、実際はこんなにバラバラに配置されています。

BFD3 多数の鍵盤にマッピングされるハイハット:23秒

BFD3は世界最大数のキーマッププリセットを持っていますので、GMを基準としたり、他社マップをベースにしたものを使えば、それなりに使いやすく動かせるかとは思いますが、それでもこれだけのバリエーション。ムービーでは全てのバリエーションをお見せしていません。

リアルなドラムトラックをプログラムするためには(大容量ドラム音源をお持ちの方なら、きっとそう願っているでしょう!)、熟練のドラマーさながらにハイハットを精密に打ち込まなければなりません。これらの鍵盤に散らばったハイハットを駆使して、時にはドラマーになった自分をイメージしながら「ここはどれくらいハイハットが開いているか」というプログラムをする必要があります。

しかし…大変です。色々なところにマッピングされたハイハットを使い分けるのは…。


なにかもっと快適にハイハットに集中できる手段はないか

実はこんな前フリをするくらいですから、あるのです。BFD3なら。

鍵盤のいたるところに散らばるハイハットを「たったの1カ所の鍵盤」に集め、集中コントロールできる方法が。ここからはその設定に関してご紹介をしてまいりましょう。

最初に行って頂くのは、「どの鍵盤で集中コントロールしたいか」を決めて頂く作業。その作業はこの流れです。

BFD3 キーマップを設定する:47秒

ビデオ中、見慣れない単語が登場しました。「Variable Tip」です。単語からもそれっぽい雰囲気は伝わってきますが、言い換えると「変幻自在のハイハット」といったところでしょうか。ご自身で「ココ!」と決めた使いやすい鍵盤を見つけて、ビデオのようにアサインをしてみて下さい。


次に行って頂くのは「ハイハットの開き具合を調整する」ための、コントローラーのアサインです。MIDIキーボードなどで使っていないホイールやスライダーを使用します。私の場合、ドラム音源でモジュレーションホイールを使うことがないため、コレを使う事にしました。ビデオの通りにモジュレーションホイールをアサインしてみましょう。

BFD3 ハイハットコントロールのCCアサイン:34秒

勘のするどい方はこの辺でお気づきかと思いますが、このコントロールは実際のドラマーでいうところの「左足のペダル」と同じ役割です。左足を上げればハイハットが開ききり、左足を踏み込めばハイハットが閉まる。この動作を(今回はモジュレーションホイールに)アサインしたというわけです。

この状態で、先ほど決めた鍵盤を演奏すると、ビデオの後半にあるように「たったひとつの鍵盤」でオープンからクローズまでのハイハットにアクセスできます。「ハイハットをだんだん開いていく」とか「1/4だけ開けた状態から微妙に開いて、ハーフオープンにする」なども、鍵盤を移動することなく1個の鍵盤で行うことができるようになります。


実はまだある

さらに勘のするどい方なら、ここまでの行程で「全部じゃない」とお気づきかもしれません。ここまでで登場したのは「スティックの先端部分=Tip」の奏法だけ。冒頭にも書いた通り、スティックの腹(Shank)で演奏する鍵盤が、もう1つだけ必要です。

最後に、このShankのアサイン。さらにペダルを踏んだサウンドについてのビデオをご紹介しておわりにしましょう。

BFD3 全てのハイハット!:1分7秒

いかがでしょう。たった2つの鍵盤(スティックの先端を担当する鍵盤と、スティックの腹を担当する鍵盤)と、たったひとつのコントローラー(今回はモジュレーションホイール)だけで、煩わしいオクターブシフトも、マッピングを確認する作業も必要なく、大容量ドラム音源BFD3に収録された全てのハイハットを使う事ができました。ほんの少しは、BFD3ユーザーの制作の時短にも繋がるのではないかと思います。

節約できた時間で、アレンジのブラッシュアップやメロディーの見直し、ミックスに時間をたっぷり使っていただいて、より素晴らしい作品を作ってくださいね。

>BFD3 製品詳細リンク


28 1月 14

BFDシリーズ産みの親・開発者インタビュー



ソフトウェア音源の世界で「不動の地位」をキープし続けることは非常に難しい。世界中から新しい製品がリリースされている中で、群雄割拠ともいえるドラム音源の世界ではなおさらだ。

2003年にリリースされたFXPansionのドラム音源BFDは、当時世界中のクリエーターを驚かせた。今ではあたりまえとなったオンマイクとアンビエントマイクをミックスして作り上げる構造を当初から採用、わずか数メガ~数10メガのライブラリが主流だった時代に、一気にギガバイトクラスのライブラリを持って登場、そして何より、そのサウンドクオリティ。BFDの登場は、まさしくドラム音源の「改革」が起きた瞬間だった。


その後もFXPansionはBFDシリーズをブラッシュアップし続け、最初のBFDが生まれてからちょうど10年となる2013年秋、BFD3が満を持して登場。BFDは今でもドラム音源のトップとして君臨し続けている。

ミスターBFDこと、Skot氏(弊社オフィスにて)

BFDシリーズの開発リーダーが、FXPansionのSkot McDonald氏だ。天才的なプログラマーであり、同時に心から音楽を愛している人で、BFDシリーズの全てを知り尽くす、まさに「Mr.BFD」である。

BFD3が世界中のユーザーに渡りはじめた2013年11月。Skot氏は私たちのオフィスを訪れ、BFDが生まれるきっかけから、BFD3の開発背景などを語ってくれた。


初代BFDが生まれたきっかけ

メディア・インテグレーション:SkotさんがFXPansionに入社されたのはいつ頃の事だったのですか?

Skot(以下S):私が入社したのは2002年の終わり頃、12月頃の事です。FXPansionに入社するためにニューヨークからロンドンに引っ越したんですよ。

当時FXPansionにはどれくらいのスタッフがいたのですか?

S:CEOであるAngusと、COO/CFOであるRhiannonの2人だけです。当時はまだオフィスを開いたばかりで、私の面接もオフィスではなく、パブで。オフィスは塗装すら終わっていませんでしたから(笑)

Skotさんが2002年に入社、最初のBFDであるBFD1が2003年にリリースされたという事は、入社してすぐにBFD1の開発に着手されたという事でしょうか?

S:契約して最初に手がけたのは別のプロジェクトでしたが、すぐにBFD1の開発が始まりました。

BFDの登場は世界中のクリエイターを驚かせる革新的なソフトウェアだったと思います。どうしてこのようなソフトウェアを作ろうと思ったのですか?

S:ナイン・インチ・ネイルズとの仕事でも有名なスティーブ・デューダ(Steve Duda)というサウンドデザイナーがいるのですが、彼があるドラムキットのサウンドをマルチ・マイクでレコーディングして、そのサウンドをNI Kontaktでプログラミングしようと思っていたものの、思うように動かなかったそうなんですね。複数のKontaktを一気に起動しても追いつかなかったそうです。

当時としては膨大なサンプル量だったのかもしれませんね。

S:その頃のFXPansionにはDR-008というソフトウェアがあって、これはビンテージ系のリズムボックス音源だったのですが、スティーブはCEOのAngusに「DR-008を使って、僕がレコーディングしたサンプルを使うことはできないかな?」と相談を持ちかけたらしいんですね。ところがAngusはその頃VST-AU Adapterの仕事にかかりっきりだったので、その話が私のところに回ってきたんです。「Skotならドラムにも詳しいし、プログラミングも得意だから」と。

Skotさんのプログラマーとしてのバックボーンは?

S:私はニューヨーク時代にディスクストリーミングに関するアルゴリズムの開発をしていました。大学のころにはドラムの人工知能(AI)制御の研究や、コンピュータを使ったインダストリアル・ミュージックの解析を専門にしていたので、スティーブ・デュータがナイン・インチ・ネイルスの仕事をしている人だと知って非常にエキサイトしましね。

開発に着手し始めたとき、ビジネスとしては「2年間で500本も売れればいいだろう」と考えていたのですが、蓋を開けてみれば一ヶ月で500本を達成し、その後も毎月500本以上のセールスを達成していたわけです。想像以上の反響でした。世界中のユーザーのおかげで、たった3人しかいなかった私たちのオフィスは、半年の間で12人も増員したんです。クレイジーですよね(笑)

私たちも国内での発売当初、非常に忙しかったのを思い出します。

S:日本のユーザーのみなさまにも感謝しています。ちなみに、最初にスティーブが持ち込んだドラムのサンプルは、BFD1に収録されています。このキットが、全ての始まりですね。


イギリス人と日本人の似ているところ?!

BFD1のリリース当時、私たちが取り扱っていたPerfectioneerという、同じくイギリスのブランドがあって、AKAIフォーマットのドラム音源などをリリースしていたのですが、彼らの製品もまたダイレクトマイクとアンビエントマイクの音を個別に調整できる、というコンセプトの製品でした。BFD1がリリースされた当時、「イギリスにはこういう風土があるのかな?」と思った事を思い出したのですが、実際のところはどうなのでしょう?

S:うーん、どうでしょう。スティーブはアメリカ人だし…。私もイギリス人ではありませんから、イギリス特有の事を語ることはできませんが、移住して気がついた事としては、イギリスに特有の「Boffin」なところは関係しているかもしれませんね。

Boffin?とはどういう意味ですか?

S:音楽やオーディオに限ったことではないのですが、テクノロジーに対して研究熱心で、ちょっと秘密主義なところといえばいいかな。日本ではこういう言葉はなんていうんだろう…?

日本には「オタク」という言葉があって、それに近いかもしれませんね。

S:そうそう!そういう感じ。そういう気質が根付いている部分はあるかもしれませんね。音の細かいところまでコントロールしたいという気質があるのかな。アメリカ人はコンセプトや創造に重きを置きますが、イギリス人はBoffin的にノブを動かすのが好きなんです。


数多くのケンカが、快適なBFD3を生んだ?!

BFDシリーズの基本構造。反応が大事なアタック部分はRAM(メモリ)に読み込み、後ろの部分をHDDやSSDからのストリーミングで繋ぐ。

BFD1の登場時にもっとも衝撃的だったのは、サウンドのアタック部分だけをメモリに読み込み、残りの部分をHDDからストリーミングで再生するというエンジンでした。当時のコンピュータは搭載できるメモリもまだまだ少なかったにも関わらず、これによってギガバイト単位のクオリティでドラムサウンドを作ることができるようになったと思うのですが、この構造を思いついたのはどういったいきさつがあったのでしょう?

S:ソフトウェア音源でこの技術を応用したものは少なかった、あるいはなかったかもしれませんが、実はこの技術はコンピュータが限られたメモリしか使えなかった60年代からある技術の延長ともいえるんです。知っている人からすると、特に目新しい技術ではないんですね。事実、UNIXには搭載されている技術だったのです。コンピュータがデータを扱う際には、少なからず似たような処理を行っているものなんですよ。

では、BFDシリーズが2、3とアップグレードしていくに連れてこの技術は変わっていないと言えるのですか?

S:いえ、着実に進化をさせています。BFD3のユニークポイントとしては、単にHDDからのストリーミングをするだけでなく、コンピュータがコントロールを失うことなく、いかにメモリから高速にデータを読み出すかという点を進化させています。ユーザーにより気持ちよくBFDを使ってもらいたいという意味を込めて、この部分を大幅に改善しました。BFD1はもとより、BFD2と比較しても超高速な処理ができるようになっています。主には、メモリ上にあるデータを超高速に処理できるようにプログラムしています。

具体的な数字で言い換えると、BFD1のプログラムは5000行のコードでできていました。これがBFD2になったときには30万、そしてBFD3は100万行ものコードになりました。私からすれば、コード地獄ですね(笑)

プログラミングに詳しくない私からすると、コードが増えるほどコンピュータの負荷が増えそうな印象があるのですが…

S:いえ、先ほどもお話した通り、全てはユーザーにより快適にBFDを使ってもらうためのプログラムになっているので、より軽快に使ってもらえると思います。それこそ、ハードディスクをマシンから引っこ抜いて直接スピーカーに投げつけるくらいのスピード感を目指していますからね(笑)冗談はさておき、BFD3のコードは100万行を超えますが、コアとなるコードは、僅かに1000行ほどなのです。ここをいかにプログラムするかで、ユーザーの快適度が変わってきます。

たしかに、BFD2からBFD3になって、明らかに動作が軽くなったという印象を受けました。

S:BFD3を快適に使ってもらいたいという一心で私たちFXPansionスタッフは何百回にもわたるミーティングをし、衝突し、胃を痛めて、ケンカもして…

…あ、これは言い方が悪いかな(笑)言い直させてください。

FXPansionスタッフは、みんな音楽が大好きで、情熱をもっています。それぞれの得意分野があって、方向性はさまざま。プログラムだけではなく、グラフィックや挙動にも多くのミーティングを繰り返しました。一度ミーティングで決まった事も、改めて時間が経ってから見てみると「やっぱりこの機能はここに配置したほうがいい」と客観的な意見が出てきたりして、しかもそれが正しかったりもする。過去のミーティングで決まったからといって、頭を固くしておかないようにしましたね。

BFD3は最初の形が出来上がってから、およそ2年をかけてベータテスターの方からのフィードバックを募りました。そこで出た意見をもとに幾度となくインターフェイスの改良もしました。「ここがイケてないね」という要素を限りなく排除して、ユーザーが使いやすいと思ってくれる部分を追求しましたからね。

ユーザーが快適に使ってくれる事はもちろん最優先ですが、FXPansionのみなさんもケンカしないで欲しいなぁ、というのが、私たちの願いですけどね(笑)

S:そうですね。でも「ここだけは不便をかけるけども」みたいな要素はなくしたかったのです。…たとえ社内で友人を失うことになってもね(笑)ご心配なく、みんな仲がいいですよ。私たちは製品の開発に情熱を注いでいます。不完全のままでリリースしたくはないのです。とてつもないアイディアがあったとして、寝る間を惜しんで作業をしなくてはならないとしても、スタッフ全員がその時間を惜しまないのです。

BFD2からBFD3のリリースまでは約5年の月日がありましたが、その間はそのような作業があったということなのですね。


軽くなったBFD3、追加された新機能

S:実をいうとBFD3は、今から8ヶ月ほど前に「完成」していました。ところがCEOのAngusが突然「すごくいいインターフェイスのアイディアを思いついた!」とミーティングで話したのをきっかけに、他のスタッフも「実は僕も…」なんて手を挙げはじめて(笑)

BFD3の動作がBFD2に比べて軽快に感じるのは、グラフィックのアニメーションをよりシンプルにした事も理由のひとつです。BFD3はBFD2に比べても1.5倍のデータをストリーミングしていますし、さらにリアルタイムでロスレスファイルをデコードしながら再生しています。

BFD2の時よりも多くの処理をしているにも関わらず、動作は軽快になっているということですね。

S:少し技術的な話になりますが、BFD3は近年のコンピュータであたりまえになっている複数のCPUを搭載したマルチスレッティング・プロセスに最適化しています。そればかりでなく、新しい技術として独自のロスレス・コンプレッションを搭載しました。これによってBFD2までの時代と比べて1.5倍ものデータを使用しているにもかかわらず、HDDの負荷を半分以下に抑える事ができたのです。

ロスレスという事は音質的にも失われるものがないファイル、という事ですね。

S:そうです。この技術によって従来のBFD2に比べてロード時間が3倍速くなったとも言えます。FXPansionが新たに開発した技術です。とはいえ、このような技術をユーザーのみなさんが気にする必要はなく、より快適に使用できるようになったと思ってくれればと思います。ストレスのない音楽制作に役立ててもらえれば何よりも嬉しいですからね。

シンバル・スウェルとは:シンバルを連打したときや、ロール奏法をなどを行ったときに自然なつながりが得られる新機能。これにより従来のドラム音源で「いかにも打ち込みのような」不自然さを排除し、リアルなシンバルを再現できる機能。

BFD3は軽快なエンジンも魅力ですが、新たに追加された機能も魅力です。シンバル・スウェル機能やタム・レゾナンス機能が主な追加機能だとおもうのですが、それぞれどういった背景から生まれたものか、教えていただけますか?まずはシンバル・スウェルから。

S:シンバル・スウェルは、実はかねてから搭載しようと考えていた機能でした。ジャズなどでライド・シンバルをレガート奏法を音源で再現しようとすると、どうしてもサンプルを連打しただけの「嘘くささ」が目立ってしまう。なぜならシンバルって、本体そのものが「揺れる」からです。揺れているものを叩いているので、アタックのずれ、そのときのエネルギー、時間軸上のディケイ(減衰)とか、そういったものを表現しなくては本来の深みを出せないと感じていました。

こういった機能をレコーディングしたサンプルで表現するには限界があるので、BFD3のエンジンでは初めてモデリングで再現できるようにしたのです。これらのリサーチには時間もかかりましたが、非常に楽しいものでした。最高の状態でレコーディングされたサンプルと、モデリングによるデュアルエンジン。シンバルを連打したときにアタックが変化する効果を試してみてください。

タム・レゾナンスとは:キックやスネアを叩いた時に起こるタム本体の共振をオン・オフできる機能。オンにした場合には、キックやスネアを叩いたときにタムのオンマイクフェーダーに共振音が付加される。

タム・レゾナンスについては?

S:これは…すごく頭を悩ませた部分です。ドラム本体の鳴りを考えたときに、タムというパーツは明らかにもの凄く共鳴をしています。タムに立てたマイクは、もちろんその共鳴を捉えているわけですね。

ドラムそのものを再現しようとすると、このタムの共鳴を無視するわけにはいかないのですが、多くのミキシンエンジニアは、膨大な時間をつかって「いかにタムの余分な残響を排除するか」という作業をしているのです。もちろん、反対にその共振がほしいという声があるのは分かっていました。

ミュージシャンとエンジニアの視点の違いかもしれませんね。

S:そうですね。他のメーカーではサンプルでこの現象を再現しているとこともあります

とあるドラムキットのマルチサンプルをレコーディングしようとしたときに、スネアを叩けばそれぞれのタムに立てたマイクにスネアの音がカブリますし、タムの「共振」も入ってくるはずです。ところがここでスネアを変えたとすると、スネアによって生まれたはずのタムの共振は変わってくるはずですよね

スネアとタムによって生まれる「ドラムキットの一体感」といったところでしょうか。

S:そうです。サンプルでこれを再現しようとすると「スネアを変えたのに、タムの共振は変わらない」という不思議な状況になってしまうのです。もっというと、マイクの違いもあるはずです。BFD3はそういった矛盾が起こらないように、スネアやキックを変えたときにも本来の共振が得られるよう、モデリングエンジンを採用しました。キックやスネアを入れ替えてもタムの共振がマッチするように、統一感のあるサウンドをを得られるようにしたのです。もちろん、このサウンドがミックス上で不要であれば、オフにすることもできますからね。

モデリングのエンジンも採用しているということは、これまでのライブラリ(BFD2、その他拡張音源)でもその恩恵が受けられるということですね。

S:はい。実はこのタムレゾナンスやシンバルスウェルのアルゴリズムは、ロンドン大学の博士課程の学生たちによる半年ものリサーチを基にして作ったものなんです。FXPansionはロンドン大学と密接な協力関係があって、ドラムに特化した研究の一部を共有しているんですね。彼らのアイディアもまた素晴らしいものが多く…

MI注:この後、おそらくは非公開の情報を含む内容だったため割愛をさせて頂く。ロンドン大学とスコットさんのアイディアは、私たちの想像を遥かに超える強烈なものであった。私たちの興奮とともに、いつかアップデートで搭載してほしい、というリクエストを伝えた。


オススメの設定や、隠し機能はありますか?

S:タムレゾナンス機能をリサーチしている時に見つけた副産物のようなもので、特に隠しているわけでもないのですが……きっとほとんどの方が気がついていないかもしれない機能をひとつ。

タムというのはアタックの瞬間からサウンドが減衰するまでの間にピッチが変わります。レゾナンス(共振)をモデリングで実装するために、タムのピッチが安定するまでのピッチカーブを特定する必要がありました。ピッチが安定すると、レゾナンスが発生するからですね。私たちはここに時間を掛けて、全てのタムのアタックからリリースまでのピッチがどう変化するか、どこで安定するかを調べ上げたのです。

5年以上もの開発期間をさらに裏付ける逸話ですね。

S:BFD3でタムを選択して、Techパネル(画面右側)を見てもらうと”Tuning” というセクションがあります。ここに「KEY」という表示があって、タムのピッチが表示されています。

このセクション右側に「Learn」というボタンがありますが、このボタンを押してから特定のMIDIノートを送信すると、タムをそのノートに合わせることができるのです。将来的には楽曲のキーに合わせてリアルタイムにチューニングを変化させたりなんて事も…できるかもしれません。

これは面白い!まだデモンストレーションなどでもご紹介していませんでした。

S:多くのユーザーは「なんでそんな機能まで?」と疑問に思うかもしれませんが、「今までできなかった事ができるようになる」というところがクールじゃないですか?もともとこの機能は、BFD2のレコーディングを行っていたときに、エンジニアが「コード入力でタムチューニングできたら良いのにな」とふと発したところから得たアイディアなんです。

もしもこの機能を使って下さるのであれば、ひとつだけ注意を!これはジョン・エムリッチに教えてもらったエンジニアならではのテクニックですが、タムのチューニングは曲のキーから僅かに外しておいたほうが良いんだそうです。

完全に合わせるよりも、合わせてから少しだけ手動でずらす、という事ですか?

S:そうです。完全に一緒のままだと、ギターや他の楽器と混ざった時にその帯域が共振してしまうんですね。

BFDには機械のような連打を解消する「アンチ・マシンガン・モード」や人間味を加える「ヒューマナイズ機能」がありますが、「完璧」から少しだけずれている事は、音楽にとっても大事ですね。遠いところ日本まで来て頂き、ありがとうございました。

S:ありがとうございます。日本でも多くの方にBFD3を使ってもらえたら何よりです。


知的でクール、聡明なプログラマーという印象のSkot氏だが、このインタビュー収録が終わったあとの会食では、いかに音楽も好きか、またいかにドラムそのものも大好きなのかを熱く語ってくれた。こういう開発リーダーだからこそ、世界中のユーザーを魅了するソフトウェアを作り上げることも出来たのだろう。

常に進化を続け、ユーザーからの声を聞き漏らさない開発体制(事実、このインタビュー中に私たちがリクエストした「ほんの小さな」改良を、その後のマイナーアップデートに含めてくれた)。もしもみなさまが、長くつきあえるドラム音源を探されているようならば、ぜひともBFD3をチェックしてほしい。

>BFD3製品詳細ページ


25 1月 14

BFD3はむずかしい?


スタッフHです。

私は仕事柄、楽器店さんへお伺いしたり、クリエイターやエンジニアの方々とお会いしたり、あるいはイベントなどでユーザーさんとお会いする機会が(社内では)多い方なのですが、BFD関連のお話になったときに、

「BFD3、音はすごいと思うんだけど、ドラムの音作りが分かっていないと難しいよねぇ」


と言われることがあります。確かに、やろうと思えばドラムレコーディングと同じような細かなコントロールもでき、反対に実際のレコーディングでは絶対にできないこと(例えば、アンビエントマイクにキックを拾わせない、とか)もできてしまいます。とんでもないほどのマイクを使って収録しているぞ、とか、キック1つにマイクが何本も使っていて、ビギナーには使えないらしい、とか、まことしやかな情報もあるようで、私は立場上、「で、実際のところどうなの?」と聞かれる役目です

私もドラムレコーディングの現場をたくさん見ているわけではないので(ライブは大好きなので、ちょくよく行きます)、正直なところ一級のエンジニアさんのようにドラムの完璧なバランスを作り上げることはできませんが、BFD3には強力なプリセットがたくさん入っているので、ここから微調整をしてデモンストレーションなどを行います。

BFD3の細かな機能を挙げていけばキリがないのですが、本日は最もシンプルな使い方。「プリセットを呼び出して、ちょっとだけ微調整した」サンプルをいくつかご紹介しましょう。微調整とは、シンセ音源でほんの少しフィルターを閉める、くらいの感覚です。

本記事の前提として、BFD3の後にリミッター(WAVES L2)だけを用いました。が、これは音圧を出す目的ではなく、ピークが付かないようにしているだけの作業です。DAWにパラアウトもなし。

ドラムキットを読み込み、アンビエントフェーダーのボリュームをキットによって少しだけ変えました。変更点は補足しますね。全てのドラムフレーズは同じもの(BFD3に内蔵されているもの)を使用しています。


  • プリセット1:Smooth Jazz JMキット

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これは最初に試したキットで、ほぼキットを読み込んだそのままです。ドラムフレーズがジャズ/ファンクに適したものだからか、非常にバランスよく聞こえています。キックが出過ぎていたので、ほんの少しだけキックのフェーダーを下げました。

  • プリセット2:Gretch Purple DVキット

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先ほどの”Smooth Jazz” キットがおとなしめの印象だったので、もう少しキット全体が暴れているようなものがないかな、と選んだキット。キック、タムがGretsch製のものです。このキットはアンビエントマイク(トップマイク、ルームマイク)のフェーダーを全て下げても「箱鳴り」「距離感」のあるキットで、先ほどのSmooth Jazzキットとの違いを楽しめました。

ベタッと張り付くような質感にしたかったので、思い切ってアンビエントフェーダーを下げ目にしただけの状態です。

  • プリセット3:Heavy Metal JMキット

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今までよりももっともっと「強烈な」音を聞いてみたかったので、ヘビー・メタルの名の付いたキットをロード。こんなドラムフレージングなのに、メタルのキットを使っているという辺りも違いがでて面白いかなと思いました。

ドラムキットをロードした直後は、メタルらしいペタペタしたキック、これでもかと鳴り響くルームマイクが特徴的でしたが、ルームマイクを少しだけ抑えたサンプルにしてみました。上のGretschキットと比較して面白かったのは、アンビエントマイクを全てミュートすると、ペタペタするだけで全く迫力が失われること。

  • プリセット4:Country2JM キット

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ここまで徐々に激しめに攻めてきましたので、少々大人しいプリセットキットを試したくなりました。さらに、奏法も変えてブラシを使ったキット(もちろんBFD3に標準搭載)があれば、と思い見つけたのがこちら。

同じフレーズでも、スティックとブラシでは見せる表情がまた違います。それから、そのままの状態ではせっかくのブラシの細やかな表現が失われ気味だったので、アンビエントのマイクはいつも以上に抑え気味に。少々ブラシ奏法っぽさは薄い手数の多さですが、せっかく音源でコレが利用できるのですから、活用してみました。

  • プリセット5:Mapleworks Mallet DVキット

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スティック、ブラシときたら、マレット奏法を忘れるわけにはいきません。独特のアタックの丸み、弱いベロシティーの時にも太鼓そのものが鳴っているような響き。グルーブが一歩後ろにずれたような金物のノリ。このアタック感を逃さないため、アンビエントマイクはトップマイク(ドラムの真上に立てているマイク)を生かすように仕上げています。また、スネアの皮の響きを生かすため、ほんの少しスネアトップのマイクを上げています。

  • プリセット6:POP1キット

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ふと見つけた「POP」というキット。人によって「POP」の定義はまちまちだと思うのですが、BFD3ではどんな響きのキットなのか…と鳴らしてみたのがこのサンプルです。これまにない「いなたい」泥臭さ。ベタッとしているのに、妙な奥行き。ロードしたままの状態はかなり曲者の匂いがしたので(POPって、大抵曲者ですよね!)このキットだけは大胆にエディットをしました。

実際のレコーディングではできない、「アンビエントマイクにキックを拾わせない」というエディットをし、キックのアタック感を生かすように。アンビエントマイクは全体的に抑えめにして、オンマイクのサウンドを生かし気味に。特にエフェクトを使用したわけではなく、フェーダーのバランスでサウンドを作ってあります。


ここでご紹介したBFD3のキットは、全30種類のうちの6つ。さらに、エンジニアがくみ上げたバランスやエフェクトを用いたものを「全体プリセット」と言いますが、これが36種。

プリセットを読みこんで、「スネアだけを入れ替え」「シンバル全部入れ替え」なんて作業もできますので、ご自身ならではの「キット」を作り上げてもらえたらと思います。

BFD3 製品詳細ページ


19 12月 13

音色にインスパイアされて生まれるピアノアドリブ50秒(17日目)


スタッフHです。

本日は久しぶりに好評連載の「MixがうまくなるTips」記事のほうも更新いたしましたが、こちらの企画も更新です。以前も少しご紹介しましたが、本企画はIvory IIシリーズの”Upright Pianos” と”Italian Grand” の二つを使用してサウンドをご紹介しています。順番はこちらの通り。

  1. アップライト(Modern Upright)
  2. アップライト(Barroom Upright)
  3. グランドピアノ(Italian Grand)
  4. アップライト(Vintage Upright)
  5. アップライト(Tack Upright)

というわけで、本日は順番からいうと唯一のグランドピアノ、Italian Grandを使用したアドリブ・プレイをご紹介します。

Italian Grandの元となったFAZIOLIのピアノは、その生産数からも「幻のピアノ」と呼ばれるピアノですが(国内も数台しかない)、Ivory II Italian Grandの元となったピアノはその中でも最高峰の308を丁寧にサンプリングしたもの。

本日使用したプリセットは「Sweet Tshift」。ティンバーシフトを少しだけ掛けて、音が柔らかく響く効果が得られています。ピアニストのミッチー氏も、久しぶりのグランドピアノという事で、タッチの違いを感じながら(使用しているKAWAI VPC-1は、音源を変えるとタッチまで変わったように感じる、まさに究極の鍵盤)美しい響きのアドリブプレイをしてくれました。

さて、明日のアドリブはどうなるでしょう。
Synthogy Ivory IIシリーズの詳細はこちらから


<ピアニストプロフィール>

道脇 直樹
1974年大阪府堺市生まれ。3歳からオルガン、6歳からピアノを始める。
神戸大学工学部を卒業後、数年間のエンジニア勤務を経て、2006年バークリー音楽院映画音楽科に留学。
2008年Alf Clausen Awardを獲得し、首席で卒業。
現在は都内を中心にピアニスト兼作曲家として活動している。

18 12月 13

音色にインスパイアされて生まれるピアノアドリブ50秒(17日目)


スタッフHです。

先日、外出先のとあるディーラーさんの店頭で、たまたま本企画をご覧くださっているという方とお会いしました。まさにピアノ音源をどれにしようか迷われている、という方で、本企画で使用されているIvory IIシリーズを店頭に試しにこられたのだそうです。

スタッフさんを経由して私が「その担当者」という事を伝え、Ivory IIシリーズの特徴について解説をさせて頂きました。サウンドに惚れました、との事でご購入いただきましたが、無事にインストールは完了されましたでしょうか…(容量大きいですからね)。

さてさて、その方に購入いただいたのはIvory II Upright Pianos。制作されている楽曲がポップスやファンク、ジャズなどが多いとの事でしたので、オススメいたしました。

今日もまたUpright Pianosより、Barroom Uprightを使ったアドリブ・プレイを。

本日のプリセットは「Honky Tonky」。ホンキートンクピアノと言えば、現在放送中のNHK 朝の連続テレビ小説の「ごちそうさん」の音楽を担当された菅野よう子さんの、こんな記事を(私たちのTwitterアカウントで)ご紹介しました。

http://tower.jp/article/interview/2013/12/16/kanno_yoko

(リンク先はTowerRecords Onlineのページです)

「スタインウェイのアップライトピアノを、あえて調子はずれなホンキートンクチューニングにして」。私は毎朝このドラマを楽しみにしていますが、ホンキートンクピアノが流れてくる、ちょっと切なくて、しみじみする感じが好きです。

さてさて、明日のアドリブはどうなるでしょう。
Synthogy Ivory IIシリーズの詳細はこちらから


<ピアニストプロフィール>

道脇 直樹
1974年大阪府堺市生まれ。3歳からオルガン、6歳からピアノを始める。
神戸大学工学部を卒業後、数年間のエンジニア勤務を経て、2006年バークリー音楽院映画音楽科に留学。
2008年Alf Clausen Awardを獲得し、首席で卒業。
現在は都内を中心にピアニスト兼作曲家として活動している。

17 12月 13

音色にインスパイアされて生まれるピアノアドリブ50秒(16日目)


スタッフHです。

今日は前置きなく50秒のピアノアドリブをご紹介いたしましょう(面倒になったわけではないですよ)。Ivory II Upright Pianosに収録されている「Modern Upright」より、”Soft Resonant Upright” を使用した50秒のデモ・ムービーです。

プリセット名から察するに、ほのかに(弦どうしが)共振したようなサウンド、という事でしょうか。

極めて弱いベロシティで演奏しても抜けてくるサウンド、しかしながら寂しげな響き。パッと聞きは「なんだか軽めの音」と誤解してしまいそうですが、これもまた、その音を生かしたプレイによって活きてくる音なのだと気づかされます。

IvoryがV1からV2になった事で大きく変わったポイントは、サンプリングとモデリングのハイブリッドエンジンを搭載した、という事。最高の環境でレコーディングされたサンプリングサウンドに加えて、ダンパーペダルを踏んだときや、複数の弦を鳴らしたときに実際のピアノで起こりうる共振を、モデリングでも再現しているという点なんですね。

実際のアコースティックピアノは演奏者によってさまざまな表情を見せますが、Ivory IIシリーズもまた、使用者によってたくさんの表情を見せてくれる「究極のピアノ音源」なのです。

さて、明日のアドリブはどうなるでしょう。
Synthogy Ivory IIシリーズの詳細はこちらから


<ピアニストプロフィール>

道脇 直樹
1974年大阪府堺市生まれ。3歳からオルガン、6歳からピアノを始める。
神戸大学工学部を卒業後、数年間のエンジニア勤務を経て、2006年バークリー音楽院映画音楽科に留学。
2008年Alf Clausen Awardを獲得し、首席で卒業。
現在は都内を中心にピアニスト兼作曲家として活動している。

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