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セガ・『龍が如く』サウンドクリエイター、庄司英徳氏スペシャル・インタビュー『龍が如く3』編 - 前編

龍が如く

累計230万本を売った「龍が如く」シリーズの最新作『龍が如く3』。メインの骨太な人間ドラマはもちろんのこと、主題歌の矢沢永吉氏オリジナル楽曲「Loser」や、『龍が如く』でしかなしえない豪華なキャスティング、『小悪魔ageha』とのタイアップなど、話題にも事欠かない。(画像クリックでSEGA『龍が如く3』公式サイトへリンクします)

現代日本の人間ドラマをリアルに描いた作品として大ヒットを記録しているPlayStation2用ゲーム『龍が如く』『龍が如く2』。外伝的な『龍が如く 見参!』をはさみ、およそ2年ぶりとなるナンバリングタイトルとしてPlayStation 3用『龍が如く3』が、いよいよ2/26より発売された。

総合監督・名越稔洋氏のもと、キャラクターの声にはシリーズおなじみの渡哲也さんをはじめ、藤原竜也さん、中村獅童さん、宮迫博之さん、宮川大輔さん、高橋ジョージさん、徳重聡さん、泉谷しげるさんと豪華な顔ぶれを起用し、独特の世界観を築いている。

重厚なシナリオ、迫力のムービー、白熱するバトルを支えるのはセガのサウンドクリエーター庄司英徳氏。「原点回帰」をテーマに掲げた本作の制作行程、背景を、スケジュールが空いたばかりの庄司氏にお伺いした。

取材日:2009年2月


『龍が如く3』の制作について
龍が如く

『龍が如く3』より ©SEGA

まずは、『龍が如く3』の完成おめでとうございます。

ありがとうございます。

シリーズとして4作目のラインナップ『龍が如く3』が発売になりますが、まずは全行程を終えられて、振り返ってみていかがですか?

はい、とにかく疲れました(笑)。いつもの事ですが、大変なプロジェクトでした。もちろんその分達成感もあります。とにかく、タイトなスケジュールでした。

龍が如くシリーズは常に一年に一作のペースですが、やはりこれはタイトなほうですか?

むちゃくちゃタイトです。発売は1年毎なんですが、実際の開発期間は1年もないんですよ。僕たちの場合は音だけではなくて、シナリオあり映像ありと複合的な要素がありますから、ただ作曲をして流し込みを行えばいいわけではありませんからね。ただ、前作の『龍が如く 見参!』から、オーディオに特化したプログラマーを付けてもらったので、彼等のおかげでいろいろと話がスムーズになりました。

以前インタビューをいただいた時には、作曲以外の作業も担当されていると聞きましたが、今回はわりと作曲に集中した、という感じですか?

そうですね。やっと作曲に注力できた、という感じです。『龍が如く』の時にはサウンドディレクターもやっていたので、音に関わる事全般をやってましたし、『龍が如く2』の時には外部の方にもお手伝いいただいたんですが、ボイスの処理やSE(サウンド・エフェクト)もやってましたね。『龍が如く 見参!』でもなんだかんだでSEはやってましたんで、そういう意味では今回の『龍が如く3』でやっと作曲に集中できました。曲は主にバトルシーンのものをやりまして、その他にもドラマシーンのいくつかも担当しました。

龍が如く

『龍が如く3』より ©SEGA

シリーズ通しての質問になりますが、いわゆるこういった極道、任侠もののストーリーにオルタナ・パンク、ビッグビートが絡むというのは、構図として非常に斬新なように思います。しかしシナリオや映像のスピード感や緊張感にすごくマッチしているという印象があるのですが、そもそもこういった曲調にする、というのはどういった経緯から生まれた発想だったのでしょうか。

龍が如くシリーズの総合監督/プロデューサー(名越氏)がそういうイメージを持っていたんですよ。『龍が如く』プロジェクトがスタートする以前の話になりますが、当時僕が携わっていた『F-ZERO GX/AX』というゲームの制作が終わったころで、総合監督から「庄司、面白いプロジェクトを考えてるんだけどさ…」と話をもらいまして。まだ『龍が如く』というタイトル名が無くて、コードネームだけしかなかった頃だったんですけど…「こういった絵にこんな感じの音楽を入れたいんだ」という話がでた、という流れです。音楽も僕自身が好きなジャンルでもありましたし、マッチしていると言ってもらえるのは凄く嬉しいですね。

シナリオや映像に音を合わせて作る、という作業って、多くの方が経験している事ではないと思うんですが、庄司さんってどういう手順で作曲されるんですか?

作曲手順ですか…、「朝起きて…歯を磨いて…」から?(笑)

それはそれでもいいですよ(笑)

(笑)さておき、やっぱりイメージからですね。僕たちのプロジェクトの場合には、1年に一本のペースで作っていますので、映像ができあがるのを待ってから作曲のイメージを始める、というのでは間に合わないんですよ。だから、とにかく台本ですね。もう穴があくほど台本を読みます。それから企画のスタッフと話し合いをして、話し合いの結果を反映させつつまた台本を読みまくります。映像が先にできあがってない状態で作りますから、「想像を膨らませる」というのは本当に大事な作業になるんですよ。ここから曲作りに入って、実機(ベータ状態のものをプレイする専用機)に落とし込みして、合わせてみてみる。イメージと曲があっていればそのままの方向性で曲を育てますし、合わなかったらすぐに曲を作り直しです。

龍が如く

『龍が如く3』より ©SEGA

合う、合わないの判断はどのような基準で?

シナリオ前後を含めた「温度」にマッチしているかどうか、ですね。これは実際にあった事ですが、あるシーンで、ファーストインプレッションでちょっと軽いノリの曲を作ったんですね。このバトルは通過点的なもので、重要なものではないと思っていたんです。後になって背景や映像があがってきたので前後通してみてみたら、全然「熱さ」が違ったんですね。このシーンにこの曲では荷が重いというか、まぁ単に合ってなかったというか。それはすぐに作り直しました。

シナリオが熱くなって、盛り上がって行っているという場面で淡々としたビートを流すことはできませんし、逆に人(キャラクター)によっては、淡々としたビートのほうがシナリオにマッチする場合もある。この辺の抜き差しが結構難しいところです。そういう判断をするときには1プレイヤーになってみて、客観的な判断をするように心がけてます。こういう作業に入ったときには、作曲をしているというよりも「ゲームを作っている」という意識の方が強いですね。

バトルシーンの多くを庄司さんが作曲されているとの事ですが、実際にベータ機でプレイしてみることはあるのですか?

かなりやり込みます。そうやって1プレイヤーとしてゲームをプレイしてみて、客観的な判断をできるようにしています。

さきほど台本をかなり読み込まれるというお話がありましたが、庄司さんがイメージしたものと、総合監督が伝えようとしたものに解釈の違いが生まれたりすることもあるのでしょうか。

ありますね。僕が「これはダークなイメージだろうな」と読み取っていたものが、総合監督の意思はそうじゃなかったという事もありました。同じ強敵感を煽るものにしても「不気味でダークなイメージ」と「情緒的なもの」なのとではアプローチの仕方が変わります。情緒的なものなら印象的なメロディーラインが映えますし、ダークなものはうごめくようなビートとか、エフェクティブな音が映える事もあるので、そういう解釈の違いがあった場合は、すぐに新しい解釈でもって曲を作り直しますね。こういう時もやっぱり先ほどの話と同じで「ゲームを作っている」という感覚ですね。

バトルシーン以外の曲で特に印象深いものはありますか?

ゲーム内にクラブセガっていうゲームセンターがあるんですが、その中のミニゲームでシューティングゲームがあるんですよ。ミニとはいっても結構楽しめるものになっているんですが、このBGMはかなり気に入ってます。これは、過去に『F-ZERO GX/AX』を担当した僕のキャリアをかけた(笑)渾身の一作です。

龍が如く

『龍が如く3』より ©SEGA

そうか、そうですね確かに(笑)

仕事を忘れて楽しんで作りました。ぜひ聞いてみてください。

サントラを聴かせていただいて、気になった曲がいくつかあったのですが、まずEncounter The Dragoonという曲、これは"Enter The Dragon(燃えよドラゴン・原題)"のもじりですか?

そう取って頂いて構いません(笑)

メロディアスで他の曲とはちょっと違う雰囲気があるので、重要なシーンで使われているような感じを受けますが…?

全然、重要ではないですね。分かりやすくいえば、"武器修行のテーマ" みたいな感じです。

修行ですか(笑)。シリアスなシーンというわけではないんですね。

はい。で、この曲にはその辺りにまつわるちょっとした裏話がありまして。シリアスな場面ではないという事で僕自身も肩の力を抜きつつ曲のベーシックを作ったんですが、できあがったところで一度総合監督に聴かせたところ、サビの部分のメロディーをえらく気に入りまして。このサビに別の展開を持たせて、一曲作って欲しいという話になったんですね。そうしてできあがったのがサントラでも1曲目に収録している、"Fly"という曲です。『龍が如く3』には、矢沢永吉さんが4年ぶりの書き下ろし曲"Loser"を提供していただきまして、これがメインテーマになるんですが、ゲームショーだったりトレイラームービーなどで流すイメージソングとして、このFlyを使っています。

いずれの曲も印象的で、インパクトがありますね。

色々な曲を作って行く過程で、総合監督からも沢山のキーワードをもらうんですけども、やっぱり「熱さ」というか、クサいと思われてもいいから、分かりやすい熱さを表現してほしいという話がありました。むしろ「暑苦しい」くらいでもいいとまで言われた事もありました(笑)。その方が『龍が如く』っぽいんじゃないかという話はミーティングでよく出ましたね。変に凝ったものよりもストレートに表現したほうが、龍が如くのコンセプトに合うと。なのでいずれの曲もコンセプトは分かりやすいと思います。

一曲から別の曲が派生するというのは、珍しいケースなんですか?

珍しいですね。

龍が如く

『龍が如く3』より ©SEGA

『龍が如く2』のインタビューでは、例えば伊達さんが出てくるシーンではアコースティックギターを意図的に使ってみたりしている、というお話もありましたが、そういったキャラクター立てや、シーンを彩るようなのようなものは今回ありましたか?

あります。自分が作った曲にもありますし、外注さんに頼むものの場合にはミーティングに参加させていただいて、意見を出させてもらったりもしました。未プレイの方に配慮して名前は出しませんが、「とあるボス」に関わる話のときには、オルゴールの音を必ず使用しているんですね。『龍が如く3』は、2周目以降もまた楽しんでいただけるようになっているんですけども、このオルゴールに絡めて「ちょっとした音のからくり」を入れました。この手のからくりは要所に仕込みました。なので、2周目の時には「ん?」と思ってもらえるはずです。あとは、ヒートアクションというものがありまして、バトル中の映像的な演出があるのですが、ここでスローモーションがかかる事があるんですけども、この瞬間に音楽全体にローパスフィルターがかかるという案を発案し、プログラムを組んでもらいました。その上で声や効果音にリバーブがかかったりもします。これがかなり効果的で、あるのとないのとでは映え方が違うんですよ。演出の強化に貢献できたと思います。

ということは、やはり今回も庄司さんは作曲以外にもいろいろとやられているということですね(笑)

(笑)たしかに。でも1プレイヤーとしてヒートアクションを出すのが大っ好きなんですけど、いままでのシリーズ作品で「ここにこういう演出があったら最高だな」と思っていたことがやっとできた感じですね。さっき言ったサウンド専門のプログラマーがいてくれたおかげで、実現できたという感じです。


龍が如く

『龍が如く3』より ©SEGA

総括的なお話になりますが、前回『龍が如く2』のインタビューを頂いたときに、庄司さんと総合監督の間で "ツールを買うという事は時間を買うという事" というお話をStylus RMXに絡めて頂いたのですが、今回の制作にあたってそういった制作に付随するキーワード的なものはありましたか?

ツールの話には絡まないかもしれませんが、自分なりに汲み取っていたものとしては「原点回帰」という事を意識していましたね。

それは『龍が如く』という意味でですか?

はい。総合監督自身は我々にむけて直接言っていたわけではなく、社外向けコメントやコラムがありまして、そこから汲み取ったものです。これは僕ばかりではなく、チーム全体がそういう雰囲気になっていたような気がします。一番はじめの『龍が如く』を作った頃、なにもかもが手探りでしたし、何度もミーティングをしてあの世界を作ってきたんですが、そのときの感覚を大切にしようという事ですかね。

庄司さんなりの「原点回帰」として、実際の作業に反映されたものはあったのでしょうか?

原点回帰、という意味自体は心得的な部分だったりするので、実作業がどうこうといった事ではもちろんないんですが、面白みという部分で考えれば、『龍が如く』のオマージュを入れたりなんかはしましたね。『龍が如く』をプレイしてくださった方は気づいてもらえる…と思うんですけども。もちろん若干のアレンジを加えて、「とあるバトル」で流れます。3曲ほどありますよ。あとは、総合監督から「今回もギターバシバシでいけ」とも言われてましたので(笑)この感覚が原点に立ち返った部分かもしれませんね。


後編へ
『龍が如く3』

これまでのゲームの概念を打ち破る骨太の人間ドラマを描き、大人に向けたエンターテインメントとしてシリーズ230万本を突破した『龍が如く』シリーズの最新作が、いよいよPLAYSTATION3で登場。『龍が如く2』から2年後の2009年の日本を舞台に、メインの骨太な人間ドラマはもちろんのこと、タイアップ企業、バトルなどのゲームシステム、サブストーリーやjミニゲームなど、どれをとっても過去最高のクオリティとボリューム。

2009年2月26日発売。PLAYSTATION3対応(17歳以上対象)
セガ『龍が如く3』公式サイト >>


『龍が如く3 オリジナルサウンドトラック』

架空の巨大繁華街を舞台に、愛・人情・裏切りなど様々な人間ドラマを描くことにより、これまでゲームが決して踏み込むことの出来なかったリアルな現代の日本を表現し、シリーズ累計230万本を超える大ヒットを記録した『龍が如く』シリーズ。『龍が如く3 オリジナルサウンドトラック』は、ゲーム内のサウンドの魅力を余すことなく詰め込んだサウンド集になります。『龍が如く3』での見所のひとつ、桐生一馬と遥のそれぞれが熱唱する曲も収録します。初公開となる2人の美声にもご期待ください。

2009年2月26日発売。
セガ『龍が如く3』公式サイト >>