Media Integration, Inc "Review and User Story"

Review & Story

ギタリストに支持されるIKのサウンド。
井桁 学 × AmpliTube Fender!

みなさん、こんにちは。ギタリストの井桁学です。使ってみましたよ、AmpliTube Fender。いやぁ~、リアルですごい! 今までAmpliTubeを始め、PODやGuitarRig、GTRなど、ソフトからハードまでほとんどのアンプシミュレーターは使ってきましたが、……この出音はビックリ!! ということで、口語調ではなく仕切直して(笑)。今回、AmpliTube Fenderを試奏してみてのレビューをさせていただくこととなりました。

2009年6月


これまでのAmpliTubeシリーズを使ってきた感想

AmpliTube 2へアップグレードしたユーザーにとっては懐かしい初代AmpliTubeのUI。下位バージョンのAmpliTube LiveはMboxなど多数の製品にバンドルされていたので、持っている人も多いのでは?

そもそも、私とAmpliTubeとの出会いはAmpliTube(V.1)でした。当時、"クリーンサウンドがとてもリアル"とプロの間でも有名でしたし、実際に操作してみると、本物のアンプと同様のアナログライクな操作性に惹かれ、楽曲制作などいろいろな場で使いました。そのころのアンプシミュレーターは数値で設定するものが多く、デジタルが苦手な人が多いギタリストにとっては、「待ってました!」といったアンプシミュレーターでした。その後は、クリーンや歪みなどのギターアンプとしても利用していました。

当時は、特にクリーンやクランチのサウンドが好みでよく使っていましたね。また、搭載されていたストンプはオーバードライブを多用し、アンプの歪みとストンプの歪みのバランスとで、リードのサウンドを作っていました。このストンプは今から思えばシンプルでしたが、ワウがオートワウに対応していたので、愛用していました。こうした純粋にアンプとしての利用以外に、他の楽器のトラック(オルガンやエレピなど)にアンプやエフェクトで音色作りをしたり、当時は2ミックスにかけアナログシミュレーターやサチュレーター代わりとしても使っていたことを思い出します。

見た目も、サウンドも、機能も、バージョンアップとは思えないほど進化したAmpliTube 2。Ampeg、Jimi Hendrix、Metal、Fenderと、多彩なラインナップも魅力の一つ。

そして、バージョンアップしたAmpliTube 2。UI(ユーザー・インターフェース)を一新し、モデリングしたアンプを若干彷彿とさせる画面で、より使いやすくなりました。AmpliTube 2の良さは「PRE MODEL」「EQ MODEL」「AMP MODEL」といった本物のアンプ同様の設計。プリアンプ→EQ→パワーアンプといったギターアンプの本来の信号の流れを明確にしています。さらに、キャビネットやストンプもよりリアルな画面となり、マイクの種類も増え、オン/オフマイク、ニアとファーといった距離、アンビエンスなどのマイキングも進化していきました。

個人的に気に入っていたのは、パワーアンプのワット数や真空管の種類を変えられるようになったところ。100Wと50Wの音のまとまりの違い、6L6管とEL34管のカラーの違いなど、細かくこだわれるのがとても良かったです。また、デュアルアンプに対応したことも大きく、ストンプとは別にラックエフェクトも追加され、ディレイやリバーブといった空間系のエフェクトを、アンプの後にかけられるようになりました。これにより、スタックアンプを使ったことのある人なら、より細かなエディットもできるようになりました。


AmpliTube Fenderのインプレッション

馴染みのあるFenderロゴ。Fender共同開発 & 公認だからこそ、このロゴ。

そこで、今回のAmpliTube Fenderです。試奏して感じたのは"モデリングを超えているサウンド"ということです。Fenderという名前がついていることもあり、Fender社のプライドにかけて開発していると思いました。さすが世界で唯一のFender公認ギター/ベース・アンプ&エフェクト・ソフトウェアですね。

フェンダー製のギターアンプは、特にライヴで一番多く使ってきたアンプですが、本機にモデリングされているモデルの中では、Twin ReverbやDeluxe Reverb、Vibroverbなどをレコーディング現場で使用したことがあります。フェンダーのTwin Reverbの音といえば、ファットでクリーンなサウンドあまりにも有名で、クリーンと言えばTwin Reverbの代名詞でもあります。

まず起動してみると、このAmpliTube FenderはAmpliTube 2とは違い、モデリングしているアンプのノブが再現されています。そのため、PRE MODELなどといった、従来のAmpliTube 2とは異なるUIです。では、いくつかのアンプのサウンドチェックをしましょう。


Fender® '57 Deluxe™をモデリング。Leo Fender氏がデザインしたアンプでも最も初期のものであり、影響力のあったモデル。

「'57 Deluxe」はフェンダーアンプの代名詞的なアンプで、使ったことがある方ならわかると思いますが、そのツイード柄から音が匂ってきそうなアンプです。INST VOLをMaxにすると、ミッドブーストしたクランチサウンドになります。個人的には、テンポの速い曲で重宝していて、サスティーンのない硬い音の、ヌケがいいところを気に入っています。

「'64 Vibroverb Custom」は、きらびやかな高域をもったクリーンサウンドと、MODモードにすることで中域に迫力をもったクランチ~オーバードライブ・サウンド、そして豊かなサスティーンも特徴です。特にクリーンサウンドは個人的にとても好きで、ストロークやカッティングなどに適しているように感じました。また、クランチも粒の粗さが適度で気に入りました。

Fender® Super-Sonic™をモデリング。間違えようのないFender®のキャラクター。

「SuperSonic」は、ヴィンテージ系のクリーンからディストーションサウンドまで網羅できるアンプです。歪ませていくとミッドハイに特徴をもったサウンドになり、ブースターを加えたような音の太さが出せます。一台でさまざまなジャンルに対応できるアンプといったところでしょう。

「Vibro-King」はFATスイッチがあるのが特徴で、アンプ搭載のリバーブとビブラートを使ってのアルペジオプレイは効果的ですし、サーフミュージック系では定番のサウンドです。

「'59 Bassman」は、50Wのコンボアンプなので音像もまとまりやすく、レコーディングではバッキングのダブルで使うと定位しやすい音でしょう。また、ボリューム10ぐらいまでなら、カッティングなどピッキングのダイナミクスで軽くクランチになるので、ジャンルにとらわれずに使えるアンプです。Maxのボリューム12にするとパワーコードに合うクランチになります。

Fender® Champion™ 600をベースにモデリング。かつてリリースされた練習用アンプを今日的にアップデートしたモデルです。

「Champion 600」は、1ボリュームのみ。ボリュームを上げるとクリーン→クランチ→オーバードライブまでサウンドが変わるので、ブルースやロックといったジャンルに適しています。

「MH-500 Metalhead」は、いわゆるハイゲインアンプです。中高域に特徴を持っていて、DRIVEをMaxにするとキメの細かいディストーションサウンドになります。とはいえ、設定ではクリーンも出るので、幅広い使い方ができそうです。しかし、フェンダーにはこれほど歪むアンプがあるんですね、驚きました。ソルダーノとボグナーあたりを彷彿とさせる歪みですが、歪ませていってもミッドの芯は残っているのが特徴ですね。リードプレイに使ってみたいと思ったアンプでした。


ストンプは6個のスロットに好きなものを好きな順番で接続可能。さらにストンプは2系統使えるので、最大12個のストンプを使用する事が出来る。

次に、ストンプで気に入ったものをいくつか紹介します。まず「Fuzz Wah」。特に'65 Twin ReverbにこのFuzz Wahをつなぐサウンドは、とても太いサウンドになります。FuzzとWahの順番も変えられるのもポイントです。これは待っていたエフェクトの1つでした。そして、「Fender Phanser」はカッティングに最適なフェイザーです。回転のスピードが赤と紫の色で表示されるので使いやすいです。

個人的に思うことですが、レコーディングでのギターサウンドは、"歪みのツブ"と"音のつぶれ方"が大切だと思っています。レコーディングでは、クリーンサウンドやクランチサウンドをとても多く使います。クランチサウンドを弱くピッキングしてクリーンにしたり、強く弾いてオーバードライブ・サウンドにしたりするのです。その時に重要なのがクランチのタイプ。"どんなつぶれ方"をしていて、"そのつぶれた「角」はどんな方向に向いているのか"が、音色作りのポイントなります。それを考えたとき、AmpliTube Fenderは多彩な「角」を作れる持ったアンプだと感じました。タイプの異なるつぶれ方と、ツマミを上げることで変わる"つぶれた角"や"その向き"などは今までのアンプシミュレーターにはなかったものでした。


AmpliTubeシリーズの使いこなしと良い点/改善点

AmpliTube 2シリーズの製品全てに付属するX-GEAR。X-GEARを使うと、インストール済みの全てのAmpliTube 2シリーズのアンプ、キャビネット、ストンプ(マイクも!)、ラックエフェクトを自在に組み合わせて使うことができる。

私は、AmpliTube(V.1)とAmpliTube 2、AmpliTube Jimi Hendrixを持っていますが、今はAmpliTube X-GEARで統括して使用しています。今まではアンプタイプの種類が多かったので、目的に応じてアンプを使い分けていました。しかし試奏してみて、今後、クリーン~クランチ~オーバードライブ・サウンドではファーストチョイスするアンプシミュレーターとなりそうです。これは、単純に音がいいからです。さらに、先述した音の太さと歪みのツブ、音のつぶれ方に尽きます。ピッキングのダイナミクスで音が変化するアンプシミュレーターは意外と少ないです。ニュアンスと忠実に再現できるのがAmpliTube Fenderの特徴といえるでしょう。

AmpliTubeの良い点は、操作上のメニューが一画面内に収まること。マウスで下や上に動かすことなく、AmpliTubeの画面上でメニューが完結するのです。これは、ツマミの調整などの作業やレコーディングなどの長時間の作業にはうれしいところです。また、AmpliTubeのみならず、IK Multimediaが優れている点は、ユーザーに優しいところです。単純にほめているだけのように思えますが(笑)、具体的に言うとバージョンアップが頻繁ではないということ。1年に1回、といった短いスパンでのバージョンアップではないので、じっくり使いこなせるところがいいですね。私は長い間AmipliTube(V.1)を使っていたような気がするので、AmpliTube 2が出るまでにそうとう時間が空いたのではないでしょうか(笑)。

一時期採用されていたUSBドングル。元々、ユーザーの要望からドングル仕様に変更されたが、「やっぱり前の方式の方が良かった」という要望(?)により、再びチャレンジ&レスポンス方式に。ユーザー第一(Musician's First)の姿勢は徹底している。

また、AmpliTube 2の発表後、いつだったか定かではありませんが、ドングルの使用をやめたことです。これは、本当に涙が出るくらいうれしかったです。確か、CSRやMiroslav Philhamonik(Sample Tank2やSonik Synth2はどうだったか忘れましたが・笑)などはSyncrosoftのドングルが必要でしたが、いつからか不要になったのです。あのときは画期的でした。そんなところもユーザーに優しいですね。

今後の要望は、ルーティングを自在にしてほしいことです。ストンプはアンプの前、ラックはアンプの後とエフェクトのルーティングが決まっているため、こうしたい!と思ったときの自由度がないのが残念です。デュアルアンプもいいのですが、それも含めて自在なルーティングをできるようになると、もっと使い勝手が良くなるような気がします。

ということで、長々レビューしてきましたが、少しでもみなさんのヒントになれば幸いです。そして、ぜひご自身で試奏してみてください。特にオケとの混ざりや、オケの中での音ヌケは体感してほしいです。


プロフィール

井桁 学

ギタリストとして20歳から本田恭章氏のサポートを始め、その後、様々なアーティストのサポートミュージシャンとして活動。1998年よりWEB「井桁学のギター・ワークショップ」をスタート。近年では、新人アーティストのアレンジ、ギタートレーナー、ライヴサポートもつとめ、エイベックスのライヴイベントa-nationにも参加。現在、レコーディングのスタジオ・ワークや楽曲のアレンジング、プログラミング、楽器メーカーのデモンストレーションやセミナーなど幅広く活動中。また、Cakewalk by RolandのDAWソフト、SONARのデモンストレーション/セミナーは、2003年の楽器フェアから担当。2007年、Media Integrationにて音楽制作セミナーをスタート。2008年より、MI7 JAPANにて、パソコンでの音楽制作のWEB連載を開始。  並行して、音楽教則本の執筆や監修も数多く手がけ、音楽専門誌(リットーミュージック、ヤマハミュージックメディアなど)では、採譜や奏法解説、インタビュー、音楽理論、特集記事、Q&A、新製品紹介など執筆中。

井桁学のギターワークショップ
http://www.guitar-workshop.net/