Sound Recording & Mixing Engineer

Jun Tendo

21 Dec 10

さよならヤマハ渋谷店コンサート

「さよならヤマハ渋谷店コンサート」

44年の歴史に感謝を込めて、ミュージシャンが自らコンサートを企画。

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 1966年11月12日、渋谷区道玄坂2-10-7に、ひときわ大きな楽器店「ヤマハ渋谷店」がオープンしました。ヤマハ直営の楽器店としての側面だけではなく、音楽教室/ライブ・ハウス/R&D等も併設し、音楽の情報発信/交流の場として、プロ・アマ問わず、多くの音楽家から愛されて続けて来た場所でもありました。

渋谷店開店前

渋谷店開店前


 そのヤマハ渋谷店が、2010年12月26日を持って44年の歴史に幕を降ろすことになる、と言うニュースを知った数多くの人たちの中の1人、ミュージシャンの松武 秀樹がTwitter上で「渋谷店にお世話になったミュージシャンのみんな、渋谷店へのお礼にコンサートをやろう!」という掛け声のもと、まずはTwitterを通じてミュージシャンの向谷 実、倉田 信雄、ホッピー 神山、山川 恵津子らが参加を表明。そこからさらに声かけが広がり、日本の音楽シーンを司ってきた重鎮達が集結、出演ミュージシャンは総数40名以上となる「さよならヤマハ渋谷店コンサート」が企画されました。

 このコンサートでは、普段はあまり観る事が出来ないミュージシャンの組み合わせによるユニットでのアンサンブル、歴代のシンセサイザーとキーボーディストが総動員で演ずるセクション、このコンサートの為だけに、松井 五郎・作詞、山川 恵津子・作曲で特別に書き下ろされる曲など、今までの日本国内音楽シーンの中においても他に例を見ない・・・まさにヤマハ渋谷店44年の歴史、それとリンクし、リスペクトする幅広い楽曲の数々が繰り広げられるコンサートです。

 ヤマハ渋谷店閉鎖に手向けたこの動きに際して、ヤマハ関連からのご厚意も受けられリンクされた状況になり、ヤマハ銀座スタジオから2日間のリハーサルに向けたスケジュール調整、ヤマハミュージック東京 ART渋谷からYAMAHA CF ⅢS コンサート・グランド・ピアノなどの貸し出し手配、株式会社エピキュラスの音響グループからSRチーム構成など、まるで、何十年もかけて拡散していった多くの才能が、各々握りしめたパズルの欠片を渋谷に持ち帰って、ひとつの大きな絵に仕上げるかのようなヤマハ連携で、このコンサートに向かっています。

 さらに、ミュージック・トラック社のご協力で、ヤマハが1983年に発表した名器DX-7を軸とした、歴代のシンセサイザー群が用意され、往年のシンセサイザー・サウンドがSHIBUYA-AXに轟き、デジタル・シンセサイザーの原点から見つめてきた渋谷店に相応しい、そんなコンサートにもなっています。

 この、決して再演は行われない、最初で最後の、ヤマハ渋谷店と共に歩んできたミュージシャン達の決起による「さよならヤマハ渋谷店コンサート」・・・多くの人たちの記憶の中に、渋谷店の記憶と共に残るようなコンサートに、ぜひ足を運んでいただき、その目と耳で、渋谷店の歴史を私たちと一緒に思い返し、未来へ繋げましょう。

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これを読んで下さった音楽ファン、楽器ファン、そしてヤマハ渋谷のファン、皆さん是非足を運んで下さい。私、天童 淳がSR面で参加してレコーディングのサウンド・ノウハウも投入し、株式会社エピキュラス 音響グループと一緒になって、新しいサウンドをお聴かせします。

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チケットは、キョードー東京、他プレイガイドから、6,000円(ドリンク代別)で12/11より発売中。

出演者:
大澤 誉志幸 (Vo, Gt)、小坂 明子 (P, Vo)、サンプラザ中野くん (Vo)、中西 圭三 (Vo)、吉田 美奈子 (Vo)、ホッピー 神山 (Key) + 福岡 ユタカ (Vo)、坂本 朱 (Vo)、島村 英二 (Ds)、岡沢 章 (B)、後藤 次利 (B)、斉藤 英夫 (Gt)、椎名 和夫 (Gt)、古川 望 (Gt)、松井 五郎 (Lyric)、松下 誠 (Gt, Cho)、松原 正樹 (Gt)、倉田 信雄 (P, Key)、山川 恵津子 (Key, Cho)、氏家 克典 (Key)、篠田 元一 (Key)、福田 裕彦 (Key)、松武 秀樹 (Syn)、小川 文明 (Key)、向谷 実 (Key)、宮崎 隆睦 (Sax)、DJ TARO (DJ)、弦一徹グループ (Strings Section)

日時:2011年1月19日(水)18:30開場 19:00開演
開場: SHIBUYA-AX
チケット:キョードー東京、チケットぴあ、イープラス、ローソンチケット、CNプレイガイドで発売中
インターネット有料配信を予定しています。
詳しくは > 「さよならヤマハ渋谷店コンサート」公式サイト

14 Dec 10

ありがとう、ヤマハ渋谷店

ビートルズが日本武道館での来日公演を果たした1966年、日本国内は高度成長期まっただ中でした。そして同年11月12日、渋谷のハチ公口を降りてスクランブル交差点を渡って左側坂道の道玄坂の中腹より上に「日本楽器・渋谷店」がオープンしました・・・今から44年前の出来事です。

ヤマハ渋谷店開店前 (渋谷店所蔵アルバムより)

ヤマハ渋谷店開店前 (渋谷店所蔵アルバムより)


当時のヤマハ楽器関連の会社名は「日本楽器製造株式会社」で、その直営店と言うことから「日本楽器製造株式会社・東京支店・渋谷店」が渋谷店の正式名称ですが「ヤマハ渋谷店」として多くのミュージシャン、音楽愛好家、オーディオ・マニアなどから親しまれてきました。

尚、1987年に社名が日本楽器製造株式会社からヤマハ株式会社に変更され、株式会社ヤマハミュージック東京という組織に改編され「株式会社ヤマハミュージック東京 渋谷店」というのが1987年以降の正式名称になっています。

渋谷店開店前 (渋谷店所蔵アルバムより)

ヤマハ渋谷店開店前 (渋谷店所蔵アルバムより)


自分のプロフィールの冒頭には必ず書いている「ヤマハ渋谷店」、1982年に渋谷店3FにあるLMセンターへ録音とSR(Sound Reinforcement)のスタッフとして就職して1984年にテレビ朝日映像(株) 朝日サウンド・スタジオへ入るまでの2年2ヶ月程でしたが、ここで経験した事とここで出会ったミュージシャン・講師・スタッフとの仕事や会話・・・そのどれもが若かりし自分にとっての肥やしとなっています。

渋谷店開店時のテープカットの儀 (渋谷店所蔵アルバムより)

開店時のテープカットの儀 (渋谷店所蔵アルバムより)


1982年当時のレコーディング機材は、まだデジタル機器が驚くほど高額品だった時代で、海外製のEventide H949やams rmx-16などは、当時のアナログ機器群から比べると機能対費用的感覚から言えば、べらぼうに高額だったデジタル創生期でもありました。ちょうど最初のFM音源SynthesizerであるGS-1が発売された時期で、渋谷店2Fには生方さんによる音源プログラミング・エリアも有ったり、ピアノはショート・スケールながらもピアノ弦が張られピックアップで収音するスタイルの電気ピアノ、CP70/CP80が既に全盛時(Weather Reportのライヴ時にはJoe Zawinulも愛用して独特のサウンドを展開)、そのすぐ後には世界中を席巻したDX-7シリーズも発売され、録音/SRの現場ではそれまでの概念を急速に変えつつあった時期でした。両現場とも最新鋭のキーボード類以外は従来のギター、ベース、ドラムスなどのLM楽器で構成されているため、1980年代前半のヤマハに居た事によって、デジタル楽器と生楽器が融合された録音/SRに早い時期から慣れ親しめた事は、その後のエンジニアリングにとって非常に役に立った経緯があります。

開店後になだれ込んできたお客さん (渋谷店所蔵アルバムより)

開店後になだれ込んできたお客さん (渋谷店所蔵アルバムより)


渋谷店のLMセンターにあったマルチ・トラック・レコーダーは、TEAC 80/8 というハーフ・インチで8トラックのレコーディングが出来る機種でした。この機種はTom Scholtzのバンド「BOSTON」のデビュー・アルバムの録音で使われたこともあり、民生機ながら3M社の機種のようにパンチがあって太い音で録れたレコーダーでした。8トラックで足りるように録るのもLMセンターでの必須スキルでしたが、ミルキー・ママ、ウルトラ・ブレーカー(タメゴロー [G]と外山 明 [Dr] )というバンドの録音時にはトラック数がすぐに全然足りなくなって、2Fの売り場から80/8より新しめの8トラック・レコーダーを借りてきて、傷を付けないように慎重に扱いながら、もう一方のレコーダーへとバウンス・ミックスしながらトラックを整理して空きトラックを作って・・・また足りなくなると同じ事を繰り返して・・・1990年に出版されたBEATLES Recording Sessionという本で読むまでは「なんと原始的な方法だったんだ」と思っていたことが、ビートルズの本を読んだ時にSgt. Pepper’sまでの頃と同じ様な手法だったと気が付き、なぜか単純にとても嬉しかった記憶があります。

この当時にもアンジェラの兄貴は居ました (渋谷店所蔵アルバムより)

この当時にもアンジェラの兄貴は居ました (渋谷店所蔵アルバムより)


渋谷店1Fにあったライヴ・スペースのYOUNG STAGE(サザンオールスターズ、多くのJAZZミュージシャンらが出演)が1Fの奥に新しく出来たライヴ・スペース Doin’(ドゥーイン)に引き継がれて、シーナ&ロケッツ、ぴかぴか、などのロック・バンドや、ソロ・デビュー前の是方 博邦 バンド、PRISM、などのスタジオ系ミュージシャンのライブ、多くのアマチュア・バンド、大学のサークルによるライブなど、SRスタッフとしても多くの外部オペレータの仕事を見たり、自分らもそのような刺激の中から普通のSRとは違ったアプローチでSRに挑んだり、レコーディングと殆ど同じ様な解釈でのSRなど、是方さんがDoin’でのライヴを収めた卓アウトのカセット・テープをビクターのディレクターにデモ・テープとして持ち込んで、その結果レコーディングの話しがサクサクと進んだ・・・と是方さんから感謝されたり・・・など、ヤマハ渋谷店のDNAとしての「何でも普通のままいつも通りではダメ・・・何か常に新しいことへのチャレンジ精神」が録音/SRでも自分らのモチベーションになり過ごせた期間でもありました。

YOUNG STAGE (渋谷店所蔵アルバムより)

YOUNG STAGE (渋谷店所蔵アルバムより)


1976年から1986年まで開催されていた「EastWest」というイベントでは、池袋東ショップ/吉祥寺店/渋谷店、そして横浜店や千葉/埼玉など多くの店とバンドがしのぎを削ってのし上がってきて、関東甲信越決勝大会となる中野サンプラザでの決勝に向け、各店舗/ブロック大会毎にスタッフとバンドが一体となって自分らの所から優秀なバンドが出てくるようにサポートしていた時代。EastWest期間に入ると他店との店や地域を越えた協力体制が出来上がり、東京支店を核としたSRスタッフが構成され、ブロック大会〜決勝大会までは全スタッフ混合の巨大なSRチームが構成されていました。

まだオープン・リールが数多く並ぶ店内 (渋谷店所蔵アルバムより)

まだオープン・リールが数多く並ぶ店内 (渋谷店所蔵アルバムより)


渋谷店からは1977年に「サザンオールスターズ」がEastWestに出て、サンプラザの決勝大会では惜しくもバンドとしては賞は取れませんでしたが、その後ビクターからデビューして活躍の様は皆の知るところですね。1980年には河村 カースケ氏 [Dr] が所属していたバンド「ぴかぴか」が決勝大会でグランプリを獲りデビュー、そして女性だけで結成されたAORロックバンドの「ミルキー・ママ」も渋谷店から生まれ、同年レディス部門でグランプリを獲得。椎名 林檎のストリングス・アレンジなどで名を馳せている作曲家の斉藤 ネコさんも「サンセット・キッズ」の活動は渋谷店を拠点としていたり、と今でも活躍する多くのミュージシャンを輩出した所でもありました。

ズラッと並んだAG軍団 (渋谷店所蔵アルバムより)

ズラッと並んだAG軍団 (渋谷店所蔵アルバムより)


MINI MOOGを操作する店内 (渋谷店所蔵アルバムより)

MINI MOOGを操作する店内 (渋谷店所蔵アルバムより)


Web上で公開されている「 Vol.5:田中重徳さんを迎えて (全4回) |コメトーク|OffStageTalk 」を聞くと、1970年代初頭のヤマハ渋谷店で始まったミュージシャンとの深い繋がりとその絆には、林 立夫さんからの愛情こもった渋谷店に対する思いも加え、聞き応え有りました。

GibsonコーナーにはExplorer、Firebird、Thunderbirdが・・・ (渋谷店所蔵アルバムより)

GibsonコーナーにはExplorer、Firebird、Thunderbirdが・・・ (渋谷店所蔵アルバムより)


11Fから3Fに移転再開されたLMセンター (渋谷店所蔵アルバムより)

11Fから3Fに移転再開されたLMセンター (渋谷店所蔵アルバムより)


多くの人にとって故郷とも思える場所、ヤマハ渋谷店が2010年12月26日、残すところあと2週間で閉鎖となります。

今年の夏、Twitter上の渋谷店OGからの「渋谷店が閉鎖になるそうです」というニュースを聞き、8月5日付けのヤマハ株式会社発プレス・リリースを自分の目で見るまでは全く実感が湧かなかったこの話題も、この「 株式会社ヤマハミュージック東京 渋谷店閉鎖のお知らせ 」を読んだ途端に、愕然とした記憶は今でも鮮明に覚えています。

LMセンターの初期カウンター (渋谷店所蔵アルバムより)

LMセンターの初期カウンター (渋谷店所蔵アルバムより)


プレス・リリースを読んでから3ヶ月後の11月になるまでは、自分なりの解釈はあっても事の詳細がわからないままに過ごしつつ、Twitter上でシンセサイザー・プログラマー協会会長の松武 秀樹さんが旗揚げされた「渋谷店にお世話になったミュージシャンのみんな、集まって渋谷店へのお礼を何かやろう!」という掛け声の下「 さよならヤマハ渋谷店コンサート 」という具体的な形になってきています。

私が録音していたRM (渋谷店所蔵アルバムより)

私が録音していたRM (渋谷店所蔵アルバムより)


1970年代後半の渋谷店前 (渋谷店所蔵アルバムより)

1970年代後半の渋谷店前 (渋谷店所蔵アルバムより)


ヤマハ渋谷店OB/OGの多くの方と連絡を取るようになってから見えてきた事実などもあり、私も含め渋谷店出身のOB/OGにとっては8月5日のプレス・リリースから今日まで、12月のその頃には果たしてどんな気持ちになっているのだろうか?・・・というままにあっという間にその時期が差し迫ってきて・・・私もBlogに気持ちを残すつもりで書かせてもらいました。

1Fにはエレクトーン・ハウスが・・・Keith Emersonも来ただろう・・・ (渋谷店所蔵アルバムより)

1Fにはエレクトーン・ハウスが・・・Keith Emersonも来ただろう・・・ (渋谷店所蔵アルバムより)


1966年11月以降、道玄坂から多くのミュージシャンと音楽愛好家全体を暖かく見守ってきてくれたヤマハ渋谷店・・・今は「さようなら」という言葉より「ありがとう」という気持ちの方が大きくて、数年先になってみて、いつもなら当たり前のようにあったヤマハ渋谷店が道玄坂に見当たらないのをどう感じるか?・・・閉鎖までのあと2週間の間、ヤマハ渋谷店OB/OGの「お別れ飲み会」が2回ほど有りますが、その先輩後輩達と共に語れるだけ語ってこようと思います。

1966年11月の開店からちょうど44年目の2010年11月の渋谷店

1966年11月の開店からちょうど44年目の2010年11月の渋谷店



ありがとう、ヤマハ渋谷店・・・

13 Apr 10

Eddie Kramer - PIE Compressor

今回は前回のHLS Channelに引き続きWAVESから発売されたばかりの Eddie Kramer PIE Compressor に関してです。

PIE Compressor と HLS Channel に関しては Waves Inside Tracks: HLS Channel&PIE Compressor 開発者インタビュー で興味深い開発中のエピソードなどを読む事が出来るのはとてもタイムリーな感じです。インタビューを読んでからは尚更PIEとHLSに愛着が湧いてくる感じがしました。なにせEddie Kramerが出音をきちんと確認してくれているのだから、今までのように設計開発者がデジタル・プログラマーの腕と動作的理論値だけでPlug-Insを完成させたのとは訳が違うという事です。

私が書く内容は今回も実際に使用した中での印象などを具体的に書かせていただきます。

出音に関して言葉を羅列するより解りやすいところで、AmpliTube3を使用したデモ・セッションのミキシングに PIE Compressor を追加して、どのようにサウンドが変化したのかを聴いてもらいながら、PIE Compressor のありがたき部分などもいくつか記述します。

まず、PIEはHLS同様に、実機のもつS/Nまでも大切に愛情を持ってモデリングされていて、PIE Compressorでもオーディオ上に機材のS/Nが加算されています。でも、オリンピック・スタジオで作業すれば必ずつきまとうサウンドなので、この際そんな事は気にしていませんでした。S/N部分が気になる人は、ANALOGというスイッチをOFFにすればS/Nからは解放されるので、完全デジタル志向ノイズ・レスでトラック・メイキングしたい人にはOFFという選択肢が用意されている辺りはWAVESらしい感じです。

音色変化などの参考用に「オリジナル」「AmpliTube3のみ」「AmpliTube3+PIE Compressor」という状態のMP3を参考にしてみて下さい。

【ベース / オリジナル】


【ベース / AmpliTube3のみ使用】


【ベース / AmpliTube3+PIE Compressorを使用】


ベースで使用したPIEのパラメーター

ベースで使用したPIEのパラメーター



【ドラムス / オリジナル】


【ドラムス / PIE Compressorを使用】


ドラムスで使用したPIEのパラメーター

ドラムスで使用したPIEのパラメーター



【エレピ / オリジナル】


【エレピ / AmpliTube3のみ使用】


【エレピ / AmpliTube3+PIE Compressorを使用】


エレピで使用したPIEのパラメーター

エレピで使用したPIEのパラメーター



【ギター / オリジナル】


【ギター / AmpliTube3のみ使用】


【ギター / AmpliTube3+PIE Compressorを使用】


ギターで使用したPIEのパラメーター

ギターで使用したPIEのパラメーター



それぞれのトラックはCompressorの質感を誇張せず、あくまでもミックス素材としての処理にしたためそれほど強いCompressionは掛けてありませんが、PIE Compressorを経由したあとの中域はデジタル特有の細さが無くなり、質感共々アナログ回路を経由した感じになるため、Compressionを掛けなくても通すだけで使えるPlug-Insと感じました。これはAbbey Road Plug-Insにも通ずるトレンドだと勝手に解釈してます。

それで、これらの処理された素材を使ってミックスした物が以下のような感じになりました。

【楽器関連はAmpliTube3のみ使用、他のEQやCompressorは未使用】


【楽器関連はAmpliTube3+PIE Compressorのみ使用、他のEQやCompressorは未使用】


AmpliTube3 のリアルなトーンと、Eddie Kramer PIE Compressor が持ち合わせているアナログ機器そのもののサウンドのお陰で、ProToolsのデジタル臭い中域が Studer A800 で作業しているように充実するため、Media Integration様からデモ版を使用させてもらってからというもの、ミックス途中にどのトラックにもPIE Compressorで若干のCompressionとアナログ機器特有の中域の粘りと倍音を加味したくなり、そうする事によってコンプあとのEQの増減があまり必要なくなるあたりはPIE Compressorのモデリング元になっているPYE Compressorのキャラクターあっての感じです。マスターに使用してもバスでもトラックでも、各々の使い道で各々の対応しやすい機種として、色々な場面で活躍してくれそうです。

特にリリース・タイムを絶妙に調整してゆくと、楽器のリリース自体もコントロール出来ているような感触になり、アタックもソフト〜ハード・ニーまで、入力されるソースのキャラクターに対して自然な反応を示してくれるため、バリバリのデジタル系コンプレッサーで音色が変化せず、単なるレベリング機能だけの理論値どうりに動作するコンプレッサーとは違い「こういう機種を望んでいた」通りになってくれた感じです。

コンプレッションに対応してOUTPUTをある程度あげてゆくとサウンドにドライブ感が増えてくるので、線が細いと感じたトラックにはOUTPUTを上げめにしてコンプレッションを掛ける事により、より太さが増した中域となってくるため、生楽器だけではなくSynthesizerを多用する際にもPIE Compressorの回路を経由させる手法は使えそうでした。

そんな感じで2回に渡って掲載してきた Eddie Kramer 関連のPlug-Ins、モデリングの技術革新とコンピューターのCPUパワー・アップの恩恵でDAWなどのオペレーション・システムでも十分アナログ的要素が出せるため、そろそろハイ・リスクを伴う超高額で希少性の高いビンテージ機種に固執しなくても良いかも・・・と思えました。

28 Mar 10

Eddie Kramer - HLS Channel

WAVESからリリースされたばかりのPlug-Insで、Eddie Kramerが監修で参加している HLS Channel / PIE Compressor をMedia Integration様のご厚意により試用させてもらいました。今回の投稿ではHLS Channel(H/AとEqualizerユニット)の方をとりあげます。

この2種類は既にリリースされているSignature Seriesの The Eddie Kramer Collection はEddie Kramerの方針で各楽器に対して処理するプロセスを対象音源毎にひとまとめにした物ですが、それとは異なり、WAVESのページでも説明書きがあるように、ロンドンのオリンピック・スタジオに導入されていたHelios Mixing Consoleのモジュール部分をEddie Kramer監修の元、忠実にモデリングされたPlug-Insとなっていて、Abbey Road Plug-Ins同様にユーザー・インターフェースのデザインも音処理の質感同様に現物そのまま・・・という志向になっているところがたまりません。

因みにWAVESのページにも記載がありますが、オリンピック・スタジオではBeatlesが1967年に「Baby You’re A Rich Man」のレコーディング・セッションで使われたり、Jimi Hendrix、Led Zeppelin など錚々たるミュージシャンのレコーディングで、Eddie Kramer自身が参加した事でも記憶に残るスタジオになっていて、Helios Mixing Consoleでセッションを行っていたEddie Kramerが監修という事で、なんともありがたい事になっています。

Jimi Hendrixの新譜として未発表音源がリリースされましたが、こちらの方もHLS ChannelとPIE Compressorが駆使されたのかな?・・・逆にこのMixingの為にWAVESで開発したのかな?・・・と思える時期のリリースとなった事は単なる偶然ではないような気もしています。

まずはユーザー・インターフェースのデザインですが、メーターやフェーダー付近の腐食までもデザインに採り入れられたFender Custom Shopと同類のデザインがイイです。

Eddie Kramer HLS Channel

Eddie Kramer HLS Channel



そしてサウンドの方ですが、Abbey Road Plug-Ins同様に、通すだけでOKな感じがします。楽器の実音と倍音に対して、Heliosのモジュールがどのように反応するかも忠実にモデリングされているため、最近のトレンドになりつつあるPlug-Insの作りになっていて、このあたりは私にとって一番ありがたい部分でもあります。

EQのポイントは API 550A 同様に、限定された周波数に対する増減ですが、私の場合は細かく周波数をスライドさせて効くポイントを探すよりも、このように固定ポイントで必要なところだけイコライジングするタイプの方がサクサクと作業できるので好んで使っています。

BASSに関してはブーストかカットのどちらか一方しか操作できないため、その部分だけはちょっと使いづらい感じですが、BASSの各周波数でブーストした感じがHeliosの特徴なのか、もたつくことなくブーミーにもならず、どんどん太くなってくるので、PULTECのEQP-1A3同様にありがたいBASSのEQな感じです。

TREBLEに関しては10KHzで、SSL G Seriesのx3 モードやGMLなどを使い慣れた人にとっては12KHz〜16KHzを選択できないので物足りなさを感じるかも知れませんが、10KHz以上の帯域にかけても持ち上がってくるので、私にはなにも気になる部分はありませんでした。

10年くらい前のPlug-Insでは通してもサウンドに対して変化を起こせなかった?もしくは変化させる事が良くない事だと思っていたのか?、とにかくどのPlug-Insを使ってもサウンド作りには役立たない代物だらけだったんですが、ここ数年のPlug-Insにおける傾向は、ビンテージ機器の特性を含めて通したときのサウンドや変化の仕方を忠実にモデリングしている物が主流になってきたので、入手不可能または高価すぎて冒険したくないビンテージ機器も安心して数万円単位で使えるメリットを強く感じています。コンピューターのCPUを酷使するところを捉えても、いかに回路全体の反応を事細かくモデリングしていることが解ります。

このPlug-Insのユニークなところは、Helios Mixing ConsoleのS/N(サウンド・パー・ノイズ = 要するにどんだけノイズが乗っかっているか)までもPlug-Ins内で加算する事が出来るため、すっきりし過ぎて寂しい・・・と感じたときなど、ほんの少しノイズ・フロアを足してやるとSynth PADのようにある種のPAD的役割も担ってくれるので、状況的にいつか使ってみようとは思っています。

このConsoleに乗っかっているS/NをPlug-Ins内で足すには、左列最上段の「PREAMP」というつまみを20〜70の方にあげてゆくとどんどんConsoleに含まれているノイズ成分が加算されてくるので、アナログ・コンソールやアナログ回路を使用したレコーディングのリアリティを出したいときには重宝しそうな「おまけ機能」となっています。PREAMPのつまみの位置を70にしたときのノイズ・フロアは流石に凄いですが・・・

Eddie Kramer HLS Channel

Eddie Kramer HLS Channel



右列上部のメーターすぐしたに「NOISE」というセクションで「ORIG」「LO」とセレクトでき、ORIG側(オリジナル、要するにHelios Mixing Consoleの事)がセレクトされた状態でノイズを加える事が出来て、LO側では殆どノイズ・レスになっています。私はPREAMPの位置が20でNOISEはORIGでイイかな、と思って使っています。

HLSとPIEにおいて開発者及びデザイナーの執着心を感じたのは、周波数を切り替えたり、何かのつまみを切り替えると一瞬音が途切れてしまって、メーター上でも同様にガクンと動いてしまうんですが、この辺りはアナログ機器を使っていれば当たり前の接点切り替わり時の現象・・・この事までもPlug-Insで忠実に再現している辺りに、愛情すら感じてしまいました。

AmpliTube3に念願のAcousutic 360が登場したりと、私にとって最上のアナログ機器がどんどんデジタル・モデリング化されて増えてくるのはありがたい事だらけです。

17 Aug 09

Eddie Kramer Collection

半年もインターバルが開いてしまいましたが、気が付くとお盆も過ぎて残暑見舞いの時期となり、暑いけどもう秋へ向かっている感じですね・・・みなさん夏バテなどせず過ごしていらっしゃるでしょうか?

ところで、WAVESから「Tony Maserati Collection」に続き、待望の「Eddie Kramer Collection」が出ましたね・・・

Eddie Kramer - Drum Channel

Eddie Kramer - Drum Channel



私的にはTony Maseratiへの興味は余りなかったのでPlug-In自体をDemo版で試す事もなかったのですが、Eddie Kramerの方は興味津々で、今日届いたWAVESからのダイレクト・メールでその製品案内を受け取り、さっそくDemo版で試してみようという感じです。

Eddie Kramer - Bass Channel

Eddie Kramer - Bass Channel



Eddie KramerといえばJimi Hendrix、Led Zeppelin、KISS、らの作品におけるEngineeringやJimi Hendrixのホーム・スタジオだったNYCのElectric Lady StudiosWikipedia版はこちら)の創設時Engineerとして有名なのですが、なんと言ってもBEATLESの1967年作品、All You Need Is Love / Baby, You’re A Rich Man というシングル盤が制作された時、Baby, You’re A Rich Man を録る際にOlympic StudiosでEngineeringを担当した事で気になっていた人も多いと思います。

当時のBEATLESはEMI London Studios(= Abbey Road Studios)の録音機材がコンサバすぎて、なかなか新しいマルチトラック・レコーダーや周辺機器が導入されなかった背景から、そして当時最先端だった外部スタジオに出向く事を希望してGeorge Martin引率の元Olympic Studiosへ出向いたわけですが、EMIの社内規定により外部スタジオへEngineerが出向いてレコーディングを行う事が出来なかった?・・・正確なところはGeoff Emerickの本による記載しかないので定かではありませんが、BEATLESにとってもJimi HendrixやRolling Stonesのレコーディングで使用されていたスタジオと言う事で、何かしらの化学反応を期待していたような気がしています。

Eddie Kramer - Guitar Channel

Eddie Kramer - Guitar Channel



Eddie Kramer Collectionが出た事によって、今までは複数のPlug-Inを繋いで処理していたサウンドが1つのPlug-Inで、しかもユーザー・インターフェース内の数少ないコントローラーで音作りが出来ると言う事は、複数のPlug-Inを使い倒す時に比べTDMチップとコンピューター本体CPUの負荷軽減や音作りのスピード・アップが図れるし、意図する音がハッキリしている場合には、複数の機能が1つにまとまってこれほど使いやすいCollection形式は無いような気がしています。

目的が一緒でも沢山のパラメーターをコントロールするにはDAWでの作業は繁雑すぎるし、なかなか目指す音に達しない時のことを考えると、最近のWAVESが打ち出してきているJJP Collection、Tony Maserati Collection、そして今回のEddie Kramer Collectionはビギナーだけじゃなくプロフェッショナルにとっても便利な物として定着しそうな気がしています。

Eddie Kramer - Vocal Channel

Eddie Kramer - Vocal Channel



そのうち「Hugh Padgham Collection」「Bob Clearmountain Collection」「Al Schmitt Collection」「George Massenburg Collection」という感じで、目的ごとに使いやすいPlug-Inとして続きそうな期待はしていますし、そう願いたい感じです。

Eddie Kramer - Effects Channel

Eddie Kramer - Effects Channel



一番気になったのは、この「Effects Channel」で、説明の方には・・・

H-Slap is a shorter delay that emulates tape at 15 inches per second, with some EMT plate reverb at a medium setting.

Z-Slap is a longer delay (7 ½ inches per second) with a bit of feedback and a longer setting on the EMT plate.

今まではアナログ・テープレコーダーを使ったり、Echo FarmとReverbなどの空間系を組み合わせて作っていたようなFXがこれ一発で作る事が出来そうで、ごく限られた目的に徹したFXほど素早く便利に使える・・・これを使ってソロ時期のJohn Lennonのボーカル処理やドラム・サウンドを試してみたい気がしています。Robert Plant風のボーカル処理にもマッチするでしょうね・・・

Profile

プロフィール

1982年にヤマハ渋谷店でキャリアをスタート、1985年のStudio TWO TWO ONE 設立と共にエンジニアとして参加。その後Z’sへ参加し1990年よりフリーランスに転身。(Twitter ID = JacoTen2)

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